医学部9浪、母の殺害に至った壮絶な教育虐待 家出を試みるも、探偵を雇った母に連れ戻される

拡大
縮小

9年間に及ぶ浪人生活。同世代が進学や就職、結婚などを経験していく20代の大半を、母娘という牢獄に閉じ込められ受験勉強とアルバイトだけの生活を送っていたあかりは何を思っていたのだろうか。

「彼女は本当に途方に暮れていたのだと思います。9年の浪人生活の期間中、彼女は何回か家出を試みているんです。実家からお金を持って逃げようとしたこともあったのですが、お母さんが探偵を雇って居場所を調べ連れ戻されました。『そこまでするのか』と思いますよね。何度逃げようとしてもかなわなかったので、一体どんな打ち手があるのか八方塞がりだったのだと思います」

母という呪縛 娘という牢獄
『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

あかりは家を出るために住み込みの勤め先を探し、就職が決まりかけたこともあったがすべて母によって潰されてしまった。

「あかりさんは浪人中アルバイトをしていましたが、その収入はすべて自分の元に入ってくる訳ではなく家にもお金を入れなければなリませんでした。そのため20歳を超えてからも経済的な自立がなかなか難しかったのだと思います」

また、あかりは何度も自殺を考えたことがあった。18歳〜19歳の時、予備校の帰りに通る橋の上で「ココから飛び降りて死んで解放されたい」と思った。一方の母も浪人生活5年目に睡眠薬の多量服薬で自殺を図り、発見したあかりが救急車を呼んだことによって一命を取り留めている。後にあかりは控訴審で提出した陳述書で、「いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している」とつづった。殺人事件に至る前から、母娘の意識には命の断絶という選択肢が身近なものとしてあったのかもしれない。

後編に続く

都田ミツコ 編集者・ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とだ みつこ / Mitsuko Toda

1982年生まれ。編集者・ライター。編集プロダクションでの勤務を経て、フリーランスに。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT