医学部9浪、母の殺害に至った壮絶な教育虐待 家出を試みるも、探偵を雇った母に連れ戻される
母があかりに予備校代や家庭教師代、私立中学の学費など潤沢な教育費をかけられた背景には、アメばあの経済的援助があった。医者に固執した妙子について、齊藤さんはこう考察する。
「私の知る範囲では、妙子さんは親からの愛情を十分に受けて育つことができなかったと思います。妙子さんには、どうにかしてアメばあに自分を見てほしいという思いがあったのではないでしょうか。アメばあと妙子さんの手紙やメールのやり取りの痕跡を本書でも紹介していますが、妙子さんがあかりさんとのLINEなどでよく『アメばあがお金をくれたよ』『アメばあに受験の近況報告しなきゃ』と言っているんです」
1年目の大学受験であかりが京都大学保健学科(看護学科)を不合格になった時、母はあかりに命じて「京大看護科に合格したが、医者を諦められないので京大に通いながら医学科進学を目指したい」とアメばあに報告させた。
「そのことに対して、アメばあが手紙で『看護師じゃなくて医者を目指すんだね、頑張って』と、医学部を目指すことをすごく応援しているんです。医者というものにアメばあが強い関心を示したからこそ、妙子さんは娘を医者にしたかった。そうすることでアメばあに振り向いてほしかったという構造があったのではないかと思います」
誰にも相談できない、家庭という密室の問題点
中学受験を目指す中で激しい暴力を加えられていたあかりだが、大学受験でも体罰の激しさは増していった。偏差値が目標に達しなかった場合、罵倒だけではなく足りなかった偏差値の数だけ鉄パイプで殴られる「刑罰」があった。あかりは自らの手で母に鉄パイプを渡さなければならなかった。
「68引く58は、10。10発ね」
「はい」
「馬鹿が」
母に背を向け、四つん這いになり、声を出さないように歯を食いしばる。
「いーちっ」バシッ
「にーっ」バシッ
「さーん」バシッ
「しー」バシッ
「ごー」バシッ
「ろーく」バシッ
「しーち」バシッ
「はーち」バシッ
「くー」バシッ
「じゅー」バシッ。
「さっさと着替えて勉強しなさい」
「ありがとうございました。ごめんなさい」
熱さと痛みと恐怖で涙が出そうになる。頬の内側を噛んで目を見開く。まばたきをしてしまうと涙がこぼれる。涙を見せると母の怒りが再燃してしまう。今夜は眠りたい。
制服を脱ぐ。母の目を盗んで全身鏡に背中を映してみる。赤黒かったり青紫だったりの細長い痣が広がっている。
やっと前のが消えかかってたのに。
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