この事態は予想できた。実際、アベノミクス3本の矢の1つ金融緩和が行われることで、2年でマンション価格は25%上がると2013年に出版した拙著で明記している。
これは過去に行われた金融緩和が不動産価格をどの程度上げたかを調べればわかる。金融緩和されると金利が下がり、行き場を失った資金は担保の取れる不動産に流れるので、必ず起こってきたことだからだ。
持ち家は子どもが生まれたり、小学校に入ったりするタイミングで取得意識が芽生えるのは事実だ。しかし、そのタイミングが購入のベストタイミングである必然性はないし、ワーストタイミングであることすらある。なので、家賃という最もお金のかかっている費用を削減すべく、持ち家価格の値上がりタイミングに敏感でいたほうがかなりお得になる。
だからこそ「独身こそ自宅マンションを買いなさい」とも私は主張している。現段階で賃貸住まいなら、家族の事情がどうであれ、つねに家を購入することを検討しておいたほうがいい。
2人以上世帯向け物件が供給されない理由
およそ20年前は首都圏で9万戸以上の新築分譲マンションの供給があったが、2022年は3万戸割れしている。単純計算で賃貸族が6万世帯も急増していることになる。国勢調査でも30~40代の世帯主の持ち家比率が落ち、賃貸比率が上がっている。
持ち家価格は主に金融緩和で価格が変動するが、家賃は需給バランスで決定される。世帯人数が2人以上の賃貸層が増えているのに対して40㎡以上の賃貸住宅の供給は少ない。その最たる理由は賃料単価(1㎡当たりの単価)はシングル向けのほうが一般的に高いので、投資採算のよさから単身者向けを造る傾向が強いことが挙げられる。
これに加えて、ファミリータイプを供給してきたUR(旧公団)が民業圧迫を理由に新規の供給をしなくなったこともあるし、個人投資家向けの投資用マンションは面積を広くすると価格が高くなってしまい、買える人が少なくなることから原則シングルタイプしか造らないなどの理由もある。単純に2人以上の世帯向けの物件の供給プレイヤーが現在はほぼいないと思ってもらえればいい。
このため、ファミリー賃貸市場の主たる供給者は分譲マンションを購入した人が貸し出す住戸だったりする。絶対量としては少ないし、場所も都心部に偏在することになる。この2人以上世帯向けの賃貸市場を「ファミリー賃貸」と名付けると、この市場がこの10年で大きく変化してきている。
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