「住民からの蔑視も?」公務員のストレスの要因 クレームにも「公正中立」の公務員は反論できず

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このように考えると、公務員として求められる能力の1つは、相手に応じた話し方ができることと言っても良いかもしれません。担当する業務には目的があって、そのために住民に対して話をすることになるのですが、対応する住民は本当に幅広いわけです。このため、公務員としては、相手に応じて上手く話し方を使い分けることが、どうしても必要になってくるのです。

ただ、使い分けができたとしても、相手がどのように受け止めるかは、別の問題です。同じ話をしているのに、Aさんには怒られるものの、Bさんには褒められるようなことが、普通にあり得るからです。結局、こちらの話をどのように受け取るかは相手次第です。その意味では、「自分はできる限りのことはするけれど、それが成功するかどうかはわからない」といった、ある種の開き直りも必要なのかもしれません。

公務員に必須のクレーマー対応力

現在、公務員にとってクレーム対応力は必須です。実際に、自分が経験した約30年の公務員生活の中で、クレーマーが原因でメンタルをやられてしまい、休職に追い込まれた職員が何人かいました。また、私の周りにはいませんでしたが、退職してしまった人もいます。実際に経験した例としては、次のようなものがあります。

①生活保護の要件に該当しないにもかかわらず、何とかならないかと相談室で職員に対して執拗に食い下がる。しかし、どうしても無理だと判明すると、職員の悪口を言い始め、大声で怒鳴り散らす。そして、窓口で暴れ始める。複数の職員が対応し、どうにか退庁させた。

②教育委員会のとある窓口に、あるサービスの申請手続のため保護者(女性)が来庁。しかし、職員が書類に不備があることを指摘し、再度、申請するように話したところ、逆上。「そんなことは、聞いていない」、「職員の対応が悪い」などと悪態をつき、申請を受理することを要求。終業時刻になっても退庁しないため、最終的に警察に連絡して、対応してもらう。

③保育園の運営をめぐって、市と保護者が対立状態になってしまう。保護者は、連日、長文の質問状を市の担当者に送り付ける。回答の猶予を2、3日しか与えず、締切日までに回答できないと、担当者に対して電話で怒鳴り散らす。このため、職員は連日残業することとなり、心身に変調をきたし、休職となる。

これらはあくまで身近にあった例ですが、他の自治体では、裁判になる事例も少なくないようです。また、そこまでいかなくても、市民課、納税課など、住民と接する職場では、年に数回は、大声で叫ぶ住民と職員との間でトラブルになっている場面を、必ず見ることになります。住民と接する自治体職員であれば、こうしたクレーマー対応は、避けることはできないでしょう。

次ページ住民から蔑視されることも
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事