再建15年、福井鉄道「尖った新型車」に込めた思い 期待膨らむ?乗客増の立役者「フクラム」後継車

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導入費用は約3億9000万円で、3分の2を県、3分の1を国が負担。福鉄もATS(自動列車停止装置)など機器類の費用をまかなう。3月27日に営業運転を開始し、4月上旬からはえちぜん鉄道との直通運転にも投入する予定だ。代替で従来車の「880形」1編成が引退する。

福井鉄道の村田治夫社長
F2000形と福井鉄道の村田治夫社長(記者撮影)

F2000形がデビューする2023年は、最初の「フクラム」が登場してから10年目であるとともに、経営面でも1つの節目となる年だ。福鉄の村田社長は「2008年に鉄道事業の再建を始めてから今年で15年。記念すべき年に新しい車両が入るということで喜んでいる」と話す。

福鉄は2007年に鉄道の存続危機が表面化し、2008年に地域の支援による再建方針が決定。同年度以降、沿線自治体・県・国の支援のもと、安全対策の設備投資のほか利用促進策として駅の増設やパークアンドライド用の駐車場設置、そして「フクラム」の投入などを進めてきた。2016年には田原町駅で接続するえちぜん鉄道との相互乗り入れを開始。2007年度に約160万人だった年間利用者数は、2018年度には約204万人まで増加した。現在はコロナ禍の影響で減少しているが、「今年は180万人前後」(村田社長)といい、かつての低迷期より多い。

新幹線より一足早く

村田社長によると、再建スキームは第1期が10年、第2期が5年計画で、2022年度は第2期の最終年度という。F2000形が本格的に運行を始める2023年度は第3期のスタートにあたるとともに、北陸新幹線の延伸開業、それに伴う並行在来線の第三セクターへの分離と、福井県内の鉄道が大きく変化する年だ。今後は福鉄、えちぜん鉄道、そして新幹線開業後に並行在来線を引き継ぐ三セクの「ハピラインふくい」と、地域が運営に関わる3鉄道の連携も課題となる。すでに福鉄とえちぜん鉄道は、レールの共同調達や工事の際の協力などを進めているという。

福鉄は2月25日、越前市にある「越前武生」駅を「たけふ新」駅に改称した。同市内に設置される北陸新幹線の駅名が同じ読みの「越前たけふ」となるため、混同を避ける目的だ。2024年春の新幹線開業に向けた動きが進む中、変貌する福井の鉄道の新顔となるF2000形「フクラムライナー」は一足早く走り始める。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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