富山LRT「南北接続」、地方交通の新潮流を生むか 駅を貫通して直通、一部で後退した部分も
鉄道で南北に分断されていた街が、路面電車の「軌道」で1つにつながった。
富山市が進めてきた、路面電車の「南北接続事業」。富山駅の南側を走る富山地方鉄道(富山地鉄)の市内電車と、北側を走る富山港線(旧富山ライトレール)の軌道を駅の高架下で接続するという同事業が完成し、3月21日から南北の直通運転が始まった。
直通運転初日は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当初予定していた運賃無料化がなくなるなどイベントの縮小はあったものの、富山駅周辺や電車内は初乗りに訪れた市民らでにぎわった。スマートフォンのカメラで電車を撮影していた若い男性は「富山、進化したなって感じですね」と笑顔で語った。
「100年の夢が実現」
富山駅北口近くのホールで開いた記念式典で、同市の森雅志市長は南北接続事業を「市が進めてきたコンパクトシティ政策の1つの到達点」と述べ、1908(明治41)年に富山駅が現在地に開業して以来、鉄道によって分断されてきた市街地が一体化すると強調。「まさに富山市民100年の夢が実現したものといえる」と、その意義を語った。
行政や商業、住宅などの都市機能を集約し、効率的な街を目指すコンパクトシティ政策。本格的な人口減少社会に突入する中、持続可能な街づくりの方策として各地で取り組みが進む。富山市はその先進地といわれる。
特に際立っているのは路面電車の整備・活用を軸とした公共交通政策だ。同市は2006年、利用者の減少が進んでいたJR西日本の富山港線(富山―岩瀬浜)を、本格的なLRT(次世代型路面電車)の「富山ライトレール」として再生。もともと富山駅南側の市街地を走っていた富山地鉄の市内電車もテコ入れを図り、2009年に一部区間を延伸して環状線化した。
中心市街地として古くから発展してきた駅の南側と、近年まで開発が遅れていた北側。線路で隔てられていた街を路面電車で直結する今回の事業は、これまでの交通政策の集大成といえる。
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