富山LRT「南北接続」、地方交通の新潮流を生むか

駅を貫通して直通、一部で後退した部分も

路面電車網整備や南北接続事業の背景にあったのは、北陸新幹線の建設を契機とした富山駅の周辺整備だ。

2001年に新幹線の富山駅までの工事実施計画が認可されたことや、前年に国の連続立体交差化事業の要件が緩和されたことを受け、新幹線駅の整備と合わせて富山駅付近の在来線を高架化する計画が浮上した。この際、利用者数の大幅な減少が進んでいたJR富山港線を高架化するかどうかが問題となった。

直通運転開始初日の富山港線岩瀬浜停留場。市民や鉄道ファンらが乗車待ちの列をなした(記者撮影)

廃止・バス転換を含めた検討の結果、市はコンパクトな街づくりに効果が高いとして同線の路面電車化を決定。市が施設の建設費や管理費を負担し、運営は新設の第三セクター・富山ライトレールが行う「公設民営方式」を導入し、2006年4月に開業した。

富山ライトレールの開業を皮切りに、路面電車を中心とした交通政策は加速。市内電車の環状化は、2007年に国の認定第1号となった「中心市街地活性化基本計画」の主要事業に位置付けられ、路面電車としては全国初の上下分離方式によって整備された。

路面電車政策の集大成

南北接続事業は富山港線の路面電車化計画時から構想があり、具体的に動き出したのは2013年。北陸新幹線が開業した2015年3月に、まず駅の南側を走る市内電車が新幹線の高架下に乗り入れる約160mの軌道が完成した。

市民や鉄道ファンらでにぎわった、直通運転初日の富山駅付近。軌道は駅高架下を貫通する(記者撮影)

2018年には、在来線の高架化を受けて北側の富山ライトレールを高架下につなぐ約90mの軌道工事に着手。そして今年3月21日、ついに両線を接続した運行が始まり、全長約15.2kmの路面電車網が誕生した。接続事業の総事業費は約40億円で、このうち約23億円を富山市が負担。約17億円は国費だ。

南北の接続にあたり、市内の路面電車の運行は富山地鉄に一元化。第三セクターの富山ライトレールは、直通運転の開始に先立つ今年2月22日に富山地鉄と合併した。一元化により、直通運転開始後の運賃は全線均一で210円(大人)となった。

直通運転による利便性のアップで期待されるのは利用者の増加だ。2019年10月の富山市・富山地鉄・富山ライトレールの3者による共同記者会見で、富山地鉄の辻川徹社長は直通運転による利用者数の増加について「10%くらいかそれ以上」を期待していると述べている。

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