餃子の王将「タレ瓶に虫混入」も炎上しなかった訳 企業イメージの低下事例は過去に多く存在する

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筆者もふくめ多くのネットユーザーは、ほとんどの炎上事案を、SNSのタイムラインや報道、企業のプレスリリースを通して知る。あくまで傍観する第三者の視点であり、当事者の「生の声」に触れる機会はとても少ない。そして時がたち、当事者の思いを知る機会がほぼないまま、「あの企業、前に炎上していたよね」といった記憶のみ残るものだ。

その点、『フェイクニュース』では、炎上した当事者側の視点も、しっかりと描かれていたのが印象的だった。

SNSで発信される、市井の人の声が蓄積される意義

東京都福祉保健局の「食品の苦情統計」によると、東京都と特別区(23区)、八王子市・町田市に寄せられた異物混入の苦情件数は、2016年度からの5年間で、年間925件から918件、863件、660件、535件と推移。年々減少しているものの、いまも日々苦情は寄せられている。あくまで件数ベースなので、表面化していない混入事例も考えられる。

いつ自分の身に、同じような事案が起こるかわからない。消費者として接する可能性もあるし、従業員として目にする可能性もあるし、炎上の当事者になってしまう可能性もある。だからこそ「あの当時は、どうだったのか」といった当事者サイドのストーリーは、その後の行動を起こすうえでの、重要な参考資料となる。

筆者がこうして記事内でネットメディアの歴史や、過去にネットで話題になった出来事を振り返るのも、約10年間で感じた「ネットメディア編集者としての視点」を、できるだけケーススタディにしたいとの思いが根底にあるからだ。あらゆる出来事は、多面的にながめる必要がある。当事者の記憶と記録が、形になってようやく、全体が見え始めてくるものだろう。

傍観者と当事者、そして、あらゆる専門家の視点……。それらをかけ合わせた先に、明るい未来があるのではないだろうか。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid

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