餃子の王将「タレ瓶に虫混入」も炎上しなかった訳 企業イメージの低下事例は過去に多く存在する

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しょうゆの注ぎ口や、席に置いてある湯飲みをなめ回す、レーンを回る寿司に指で唾液をつける……そんな迷惑行為をおさめた映像が、数週間の間にいくつも拡散、テレビでも連日報じられた。

傍観者である多くのネットユーザー・視聴者にとっても、決して気分のいいものではなく、「食傷気味」になっていた可能性は高い。これがもし、寿司店の事案が起きていない時期の拡散であれば、ネットユーザーの受け止め方も違ったかもしれない。ネットで炎上が拡散される場合、いくつもの変数をかけ合わせているものなのだ。

思い出される、野木亜紀子氏のあの名作

カップ麺への虫混入事案をきっかけに、インターネットで「炎上」して、あらゆる人を巻き込みつつ、「延焼」を重ねていく――。そんな光景を描いた作品がある。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)などを手がけた野木亜紀子さん脚本で、2018年10月に前後編で放送された『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』(NHK)だ。

以下、やや余談になるが、今こそぜひ改めて見たい秀逸な作品ということで、ネタバレ承知でちょっとだけ内容に触れてみたい。

本作では新聞社からネットニュース編集部へ出向した記者を起点に、混入の第一発見者やネットユーザー、食品メーカー、果ては政治家まで、あらゆる人物の「やじうま根性」や「駆け引き」が描かれている。

カップうどんから青虫が発見され、その投稿により、発見者は一躍時の人に。しかし正義感があだとなり、ネット掲示板で正体が特定され、発見者への個人攻撃になってしまう。プライバシーを暴かれ、家族仲もギクシャク、勤務先での肩身も狭くなり——と、「前編」のあらすじ程度にしておくが、当時ネットメディアの現場にいた筆者からしても、背筋が寒くなるような描写だった。

そしてそんな本作は、5年経った現在でも、昨今の情勢に通じるところがある。「バカッター」「客テロ」による迷惑行為とは違った文脈だが、それぐらい的確に同作品はネット炎上の実情を描いているのだ。

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