ビジネスチャンスはシェアによって4倍に--『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』を書いた三浦展氏(消費社会研究家)に聞く
「シェア型」が消費に取り込まれ、経済を新たな方向に拡大する力を持ち始めた。そのトレンドの主役は「ポストフェミニズム」の働く女性だという。
──若者の「物離れ」が喧伝されています。
若者が物を買わないといわれ始めたのは10年前ごろのはず。当時書いた本で、「脱私有」と言った。そこでは共同消費の意味の「共費」という言葉も使っている。ただ、その概念を前面に打ち出すにはまだ早すぎると思った。それが、ここ1~2年で注目され出した。そういう消費の変化が「物離れ」に作用している。
消費や私有(私だけの物を持つ)は、楽しかったり、うれしかったり、さらには幸せと感じるからする。もちろん今も、誰もが幸せになりたいと思っている。だが、それが消費や私有とは結び付きにくくなった。物を持つにも、これは私有、これは共有、これはレンタルでいいと判断。またこれは共同利用のほうが楽しい、といった具合に仕分けして行動する。
──ただ買うだけではない?
そう。供給側も私有一辺倒を前提に売ったり、作ったりできなくなった。x軸に所有と利用、y軸に私有と共有(公有)をプロットした4象限の図を作れば、従来は私有の第1象限のみだったのが、それぞれの象限での形態ができた。逆に言えば、ビジネスチャンスは4倍になっているという言い方もできる。つまりは「シェア型」経済を知らなければ、現代のビジネスパーソンとはいえなくなった。
──なぜシェア型は拡大しているのですか。
基本的には、物をたくさん買いたいと思わなくなったことがある。私生活主義、砕いていえばマイホーム、マイカー、私の部屋、そして物をたくさん買い込むというのでは、少子高齢社会に対応できないことは皆うすうす感じている。親の介護をはじめ、これからすべきことがいろいろ見えているのに、そのままで生活がうまくいくのか、幸せになれるのか、さらに安心できるのか。できないことがわかってきた。それに雇用の悪化もある。それなら、シェアがいい、と。シェアだけですべてが解決できるとは思わないが、それがシェア型の隆盛に反映している。