ビジネスチャンスはシェアによって4倍に--『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』を書いた三浦展氏(消費社会研究家)に聞く

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──10年前にはすでにシェア型を発想していたのですね。

当時の20歳前後の若者を見て脱私有を感じた。10年経った今、その人たちは30歳前後になっている。その次の20代にもそういった価値観がある。10年前を皮切りに、シェア的な価値観の人が毎年ある程度いれば大きな数になってくる。10年前の当時、脱私有について大企業で話すと、それは今若いからで30歳になったら違うのではないか、と、いなされた。ところが、現実はそうではなく大きな流れになった。

ほぼ10年前に、ある人が起業してシェアハウスを作り始め、今や1万人になっている例もある。20代の人が30代になって、かえって増えた。ある調査では、今の20代の3割近くがシェアハウスに住みたいと回答している。シェア型全般で見れば、大きくなった背景には、30歳以上の働く未婚女性が増えたことがマーケットの拡大を後押ししている点がある。

──「何とか離れ」という表現がおかしかった?

大量消費社会で今まで売れてきた物をこれからも売りたいという、今までの主力商品にこだわりすぎた立場だから、何とか離れという表現になる。離れているように見えるのは、本当に欲しい物ではないからだ。「離れ」は、今までその商品を売ってきた人が言っていることであって、ほかに売れている物はある。

──この本ではシェアハウスにかなりのページが割かれています。

日本では人が狭い場所に密集しているから空間のシェアに関心が向く。シェアは、ニーズがあるのに値段が高く、供給が少ないものが多く対象になる。たとえば米国は国土が広いから、マンハッタンなどを除けば、空間がいくらでもある。逆に、広いからこそ情報でのつながりが大いにシェアの対象なる。

シェアの対象は、物だけではない。むしろ重要なのは、人間の知識、経験、人脈のシェアだ。これが価値が高いのはいうまでもないだろう。しかも若い世代には欠けている点だ。シェアハウスは、空間に加えて、その点を補う可能性を高める。

──コミュニティ作りにも役立ちますか。

コミュニティ作りというと、寝たきり老人をどう助け合うかという話になりがちだが、ここで重要なのは若い人に仕事や人脈を紹介し合える場を作ることだ。共同体ならぬ「共異体」という概念を提示した。同じメンバーで長くいるというのではない。時間的に限定的であり、隣同士で排除し合ったり、競争するわけでもない。

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