ブガッティ「W16ミストラル」7億円でも高くない訳 それでも「収支が難しい」超高級車は大転換期へ

✎ 1〜 ✎ 27 ✎ 28 ✎ 29 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

8リッターもの排気量を持つこの巨大なエンジンは重量も400kgを超えるが、4基のターボチャージャーが組み合わされることで、1600ps/163kgmという想像を絶するハイパワーの発生を可能とする。

7億円でも高価と言い切れない

前作、シロンは500台限定とうたわれ、「スポーツ110AnsBugatti」「タイプ55スーパースポーツ」などいくつかのバリエーションも登場した。しかし、そのうち110Ansは世界限定20台、スーパースポーツでは30台というように極めて生産台数は少なく、販売開始の案内はごく限られた優良顧客のみにしか行われなかった。

2016年から500台のみが作られたシロン(写真:BUGATTI)

今回のミストラルも例外ではなく「世界限定99台」とされ、公式なモデル発表の時点で“すべて完売”だという。これはまさに創始者エットーレ・ブガッティが実践した、希少性を武器としたマーケティング戦略であり、フェラーリやランボルギーニをはじめとしたハイパフォーマンスカーカテゴリーにおける販売戦略の定番となっている。

もちろん、これだけ極端で強気な少量生産を行うことができるのも、車両価格が高いからに他ならない。なんとミストラルは500万ユーロ。日本円にすると7億円を超える、こちらも想像を絶するものだ。

ちなみに、このミストラルにオーダーを入れる権利を持つ顧客の多くは、すでにシロンをガレージに入れているだろうし、場合によっては全バリエーションを所有しているかもしれないツワモノたちだ。

しかし、考えてもみてほしい。このモデルの開発に、どれだけのコストがかかっているだろうか。オープンボディのためにCFRP製センターモノコックも形状の修正や補強が行われ、その強度シミュレーションなどにも途方もないコストをかけている。

W16ミストラルのエンジンベイ(写真:BUGATTI)

なにより、世界各国で異なる安全基準などに適合させるためのホモロゲーション(認証)コストも近年、うなぎのぼりだ。だから、いかに車両価格が高額であっても、このような“極”少量生産体制ですべてをゼロから開発していては、十分な利益の確保は簡単ではない。

さらに、EU圏内における厳しいCO2規制に対応していくためには、完全電動化は避けられないから、将来に向けての開発投資をケチるわけにもいかない。500万ユーロという途方もない金額には、ブガッティをブガッティとして生み出し、また存続させるためのコストが含まれていると言える。

実は2021年11月、ブガッティのマネージメントは大きく変わっている。ブガッティとリマックの合弁会社「ブガッティ・リマック」が設立されたのだ。

次ページブガッティ/リマック/ポルシェの協業体制
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事