ブガッティ「W16ミストラル」7億円でも高くない訳 それでも「収支が難しい」超高級車は大転換期へ

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これだけハイパフォーマンスなスポーツカーにおいて安全性の担保は何より重要であり、それが現在のブガッティに対する評価の源でもあるからだ。

今回の構造改革は、少量生産のノウハウも熟知したポルシェのマネージメントにより、ブガッティ、リマックという2ブランドの効率的な開発を進めるというのが趣旨である。その先には、電動化へのいかなる動きにも備える体制づくりがあるだろう。これぞ全方位を見据えたフォルクスワーゲングループの底力だ。

シンプルかつエレガントなスタイリング

さて、ミストラルを眺めてみよう。シロンの基本構成をベースとしながらも、フロントのアイコニックなグリルやヘッドライトなどに多くの新意匠が採用されている。

ブガッティ東京でお披露目されたW16ミストラル(写真:BUGATTI)

「左右4灯ヘッドライトによる8ライトスタイルは、伝統的な垂直基調のフロントイメージを強調します。また、ヘッドライトユニット外周のエアインテークは、高速域におけるダウンフォース確保に大いに貢献してくれます。サイドウィンドウへつながるラウンドシェイプのウィンドスクリーン、エンジンベイと一体化したシート後方にある左右のインテークなど、すべてが美しく一体化されていることに注目してください。W16ミストラルは、ブガッティのスタイリングDNAを随所に活かし、シンプルかつエレガントな仕上がりとなっている自信作です」とアヒム・アンシャイト。

ハイパワーモデルで重要なのは、エンジンからの高熱をどうマネージメントするかだ。その点、ブガッティのエンジニアたちは、多くの経験から得たノウハウで完璧なソリューションを与えている。それが、余計なエアインテークのないクリーンなスタイリングを実現したのだ。

インテリアはブラック×イエローでコーディネートされる(写真:BUGATTI)

インテリアは、ほれぼれするような表面処理のレザーが全面に貼られ、余計なギミックはなく、あくまでもシンプル。しかし、もし貴方がこのクルマを目にする機会があったら、ぜひシフトレバーをじっくりと眺めてほしい。

その裏側にはさりげなく、レンブラントがかつてブガッティ「Type41ロワイヤル」のために描いた“ダンシング・エレファント”が可愛く踊っている。

1930年前後にたった6台だけが作られたType41“ロワイヤル”(写真:BUGATTI)

しかし、時速400kmでのオープントップというのは現実的なのだろうか。髪は乱れ、キャビン内にある小物は乱れ飛び……とはならないのか。

「良い質問です。風洞実験で幾度ものシミュレーションを行っています。結論として、あなたの心配は杞憂です。たとえトップスピードでも、キャビン内の乱気流は皆無で、同乗されるロングヘアーのご婦人の髪が乱れることもありません」とヘンドリック・マリノウスキーは胸を張る。

果たしてそれを実験するシチュエーションがあるかは疑問だが、このW16ミストラルが一般人の常識を超えたとんでもない1台であることはよく理解できた。

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越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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