テスラでグランドキャニオンへ走ってわかった事 環境性能を別にして、これなら売れるのも当然か

拡大
縮小

これに対してテスラ社は、両方を同時に、自分たちでやってきた。車の開発、生産販売と、インフラ整備の両方を手がければ、ユーザーにとって何が必要なのかもよく見えるのだろう。

例えばテスラの車は、充電コネクターを車に差せば充電が始まる、プラグインプレイになっている。充電器も、見た目がスマートなだけでなく、高出力なのにケーブルもコネクターも軽い。

スーパーチャージャーステーションは、西部や東部はもちろん、中西部でもシカゴ周辺なら街中には十分な数があるし、州間高速道路の経路上はおよそ100kmおきに設置されている。テスラ社は今後も、世界中で設置を進める方針を明確にしている。

 (撮影:木野龍逸)

日本の充電器は操作性や利便性が劣る

対して日本では、CHAdeMO(チャデモ)規格の充電器を使ったことがある人ならわかるだろうが、液晶表示部のアクリルが劣化してほとんど見えないことがあるなど操作性は悪く、出力は小さいのにケーブルはとても重い。高速道路の充電器は不便な位置にあったり、充電器から駐車スペースに戻れなかったりすることもある。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

充電器の出力や、車載バッテリーの容量は、どんどん増やしていけばいいというものでもない。何が持続可能性を高めるのかは議論の余地がある。でもテスラ社が現在までに実行してきたことは、それ以前の話ではないだろうか。

どうすればEVが認知されるのか。どうすればEVを便利に使うことができるのか。どうすればEVが売れるのか。そんなあたりまえのことをテスラ社は本気で考え、必要なメニューをテーブルに並べてきたのではないだろうか。

価格も、日米の物価や収入の差を考えれば、目玉が飛び出るほど高いものではない。動力性能が高いのは明白だ。静粛性という、内燃機関の車にとっての高級感は、EVならもともと備えている。

環境性能を別にしても、これなら売れるのも当然かもしれない。往復400kmでしかないけども、グランドキャニオンまで行ってきて、そんなことを感じた1日だった。

木野 龍逸 フリーランスライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きの りゅういち / Ryuichi Kino

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT