今は「金を買う絶好のチャンス」かもしれない 中期では再び1トロイオンス=2000ドル突破へ

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昨年3月に始まったFRBの積極的な利上げによって、アメリカの景気は確実に悪化した。前出のように好調な雇用も、いずれは目に見えて落ち込んでくることになるだろう。

ただ、有力な先行指標とされている週間の失業保険申請件数が、依然20万件の節目を割り込む水準で推移しているのを見る限りでは、早期に悪化するとも考えにくい。労働市場が好調さを維持している限り、賃金上昇圧力も簡単には後退しないだろうし、雇用コストの上昇がネックとなる中で、物価もここから下げ渋る可能性は高いと考えられる。少なくとも現時点で、早期の利上げ停止や年内の利下げ転換など、もはや期待することはできないのではないか。

金価格の急落は「必然」だった

こうした状況の変化に真っ先に反応し、大きな動きを見せたのが金市場だったというわけだ。前出のように、FOMC後の上昇局面で一時1970ドル台まで値を切り上げていたNY金先物は、その後一転して売り一色の展開となり、雇用統計発表後に一時1870ドル台まで値を崩した。直近の高値からは値幅にして約100ドル、5%を超える急落となったわけだ。

一方で市場には依然として、早期の利下げ転換に期待した動きが残っているようにも思われる。だが、インフレ抑制のために「FRBは今後も利上げを継続→年内に利下げに転じることはない」との見通しを織り込むまでは、金市場から売り圧力がかかると考えておいたほうがよい。

では多くの市場関係者が予想したシナリオ「インフレはこの先も減速を続け、FRBは年内にも利下げに転じる」という見方は、最初から完全に間違っていたのだろうか。

否、決してそんなことはない。FRBの積極的な利上げの効果が表れてくれば、物価は落ち着いてきそうだ。また、もし、「もはやインフレが脅威でなくなった」とFRBが判断すれば 、当然ながら政策金利も引き下げられることになる。ただ、今回はインフレ後退や利下げに至るまでに起こる経済環境の変化の順番を、市場が都合よく飛ばしていただけの話なのだ。

インフレが鎮静化するためには、景気や雇用が大幅に悪化しなければならないし、景気が好調さを維持している間は、インフレも簡単には後退することはないという、どちらかといえば当たり前の相関関係が、市場の楽観的な見方の前にほとんど無視されていたことは間違いない。

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