「ルフィ」強盗事件、「悪党の天国」にしたのは誰か 上から目線でフィリピンを指弾するのはたやすいが

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強制送還するためには、地元裁判所で審理中の日本人容疑者ら(フィリピンでは被告)の事件を公訴棄却とする必要がある。三権分立ののりを超えて行政側が裁判所に認めさせようという話が進んでいるようだ。

送還逃れの偽りの告訴、それを取り上げて起訴する検察、行政の意向を汲んで公訴を棄却する裁判所……。残念ながらフィリピンの法治の現状だ。

「大統領訪日前の早期送還に努力する」とテレビカメラの前で話すレムリヤ法相は、2022年10月に長男が大麻所持の疑いで逮捕され、2023年1月に一部無罪となったものの道義的責任を取って辞任すべきだとの声も出ていた人物だ。4人の強制送還で仕事ぶりをアピールしたい事情もありそうだ。

「悪党の楽園」にしているのは誰か

収容所の実態からフィリピンを「悪党の楽園」と表現するテレビ局があった。法相に直接、そうぶつけるレポーターもいた。では悪党とは誰か。日本人である。

この国で日本人が殺人などの被害に遭うとき、加害側に日本人がいるケースがほとんどだ。逃亡先として選ぶ際に手引きするのも、多くは日本人だ。

こうした事件があると押しかける日本のマスコミの中には、地元で雇った助手やカメラマンだけではなく、時には官吏や囚人、容疑者にも多額の現金を渡してインタビューや情報を取る輩もいた。

フィリピンのよからぬ状況を上から目線で指弾するのはたやすい。しかしながら「犯罪の輸出」をしているのはほかならぬ日本である。実は、「悪党の輸出大国ニッポン」なのだ。天に唾せぬ謙虚さが報道にも求められるのではないか。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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