日本人が出稼ぎ「シンガポール」発展と歴史的背景 人材重視の「罰金の国」を池上彰・増田ユリヤが解説

✎ 1 ✎ 2
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

増田:「NIKKEI Asia」の記事(2022年8月29日)によると、シンガポールの人口570万人に対して、海外から働きにきている人は、2021年の時点で、147万人。そのうち、22パーセントが、会社の役員から中堅社員までにあたる人たちだそうです。

池上:2023年1月には、これまでよりも柔軟に働くことのできる5年間有効のビザが導入されました。このビザであれば、複数の会社で働くことも可能とのこと。シンガポールは、これまでも、海外の人材を活用して経済を成長させてきましたが、今後も、世界から優秀な人たちに来てもらおうと考えていることがわかります。

増田:シンガポールを拠点に、近隣のマレーシアやインドネシアでビジネスを展開している人たちも多いみたいですね。マレーシアやインドネシアは、いまちょうど経済が成長しているところですから、ビジネスチャンスがたくさんあります。

池上:技能がある日本人が、ますます海外に目を向けるようになってしまうと、日本国内の経済の停滞が心配ですね。

東京23区ぐらいの大きさ

池上:シンガポールがなぜここまで人材を重視するかというと、土地も資源もなく、これまでも海外の人材を活用して経済を成長させてきたからですよね。シンガポールは、ちょうど東京23区と同じぐらいの大きさなんです。国全体が1つの都市とされている都市国家なので、首都はありません。

ただ、水はマレー半島から引いています。もしマレーシアと対立して水が断たれると、シンガポールは生きていけなくなります。だから独立した水源を確保しようと日本の東レなどの技術を使って、海水を純化しています。ただ淡水化しすぎたほんとうの純水は、まずくてかえって飲めないんです。

増田:ミネラルやカリウムが入っていないと、飲めないということですか?

池上:そう、シンガポールでは、too clean to drink と言われているそうです。だから工業用水として使われています。じつは、ドバイの水道水もそうで、海水を純化したものに成分を足して、飲めるようにしているんです。

シンガポールのことをよく英語でFine Country と言うのですが、2つの意味を掛けたダブルミーニングです。形容詞のfine の意味は「よい」、だからいい国、名詞のfine の意味は「罰金」、だから罰金の国。さまざまなことで罰金を取られます。

次ページシンガポールはなぜ多民族国家になったのか
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事