マルクスが150年前に予言した、資本主義崩壊 資本主義崩壊後とポスト資本主義のゆくえ
そのため、未来社会について考えるのに重要な部分のはずなのですが、今まで明確な理解がないのです。そんなことを言えば、ウソのように聞こえるかもしれませんが、この箇所を引用したさまざまな論者の議論を見てもわかります(ここでは論争史については触れません)。
この箇所を読むとき注意したいのは、次の3つの点になります。
1つは、所有(Eigentum)と占有(Besitz)との区別です。もう1つは、私的所有(Privateigentum)と個人的な所有(das individuelle Eigentum)との区別です。そして、3つ目の最も大切な点なのですが、協業と土地および生産手段の共同占有が、資本主義の成果とされていることです。
しかしながら、この3点は翻訳の次元や、論争などでしばしば混乱をきたしています。たとえば、「共同占有」を「共同所有」と訳してみたり、さらには「協業と土地および生産手段の共同占有」が、資本主義以後(つまりポスト資本主義)ではじめて成立するかのような議論です。
ところが、マルクスの展望では、資本主義において「協業と土地および生産手段の共同占有」は成立し、この資本主義の成果にもとづいて、未来のポスト資本主義で「個人的所有を再建する」というのです。
この文言を文字どおりに取れば、一般に「コモン」とか「共有(シェアリング)」と呼ばれるものは資本主義で成り立ち、未来社会で再建すべき(取り戻すべき)は、むしろ「個人的所有」ということになります。おそらく、一般的なイメージとは真逆かもしれません。
ただし、「共同占有」とか「個人的所有」という言葉をどう理解するかが問題ですが、少なくともマルクスの未来社会論では資本主義=共同占有(略して「コモン」や「共有」)を基礎にして、個人的所有を取り戻すという流れは間違いありません。
資本主義からポスト資本主義へは困難ではない?
正確に理解するには、言葉の意味も含め詳細に議論すべきですが、ここではさしあたり、ポスト資本主義への過程をマルクスがどう描いたのか、確認することだけにとどめましょう。
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