楽観的すぎる日米の株価は調整に向かいそうだ 一段の上昇があれば、その後はさらに深刻に
ただ、失望を招くような業績であっても、現時点では株価の下落は一時的に終わり、すぐに株価の切り返しに向かった銘柄が多い。加えて、ある銘柄の株価下落が同業種の他銘柄へと、横に広がるような気配は今のところほとんどない。
一方、とりわけ最近発表の経済指標で、株価を支えるようなものも見当たらない。市場に「好材料とされたもの」としては、例えば1月26日発表のアメリカの2022年10~12月期の実質経済成長率(前年同期比年率ベース)は2.9%だった。これは同年7~9月期の3.2%から減速したが、まだ数値自体が高いとされて、株価の下支えとなったと報じられている。
また、27日に公表されたPCEデフレーター(個人消費の内容についての物価指数)前年同月比は、11月の5.5%から12月は5.0%に低下し、「インフレ懸念の後退が株価を支えた」との解説になっている。だが、事前の予想値がもともと5.0%だったため、ポジティブサプライズとは言いがたい。ほかの物価指標を見ても、インフレ率自体が低下傾向にあること自体は既知のことだ。
「恐怖と強欲指数」は楽観に傾く
このように好材料が少なく、かえって悪材料が多いにもかかわらず、アメリカの株価指数(とくにナスダック総合指数)が強いのは不可解だ。
市場心理を測る「Fear & Greed Index(恐怖と強欲指数)」と呼ばれるものがある。複数の市場指標をアメリカのCNNが組み合わせて算出しているもので、0から100の間の値をとる。詳細はCNNのページを参照されたい。
この指標は、0~25が「極度の悲観」、25~45が「悲観」、45~55が「中立」、55~75が「楽観」、75~100が「極度の楽観」とされる。1月27日時点では同指数は69と、楽観に傾いている。1週間前は59、1カ月前は36であったから、最近の市場心理の楽観への振れ方は速い。
何がこれほどの楽観を引き起こしているかは明らかではないが、実体悪を無視するかのような現在のアメリカ株式市場の楽観は行きすぎの面があり、いずれ株価反落を想定したほうがよいと警戒する。
今後の市場を展望するうえで、今週は多くの材料が出る。まずアメリカでは、注目度の高いマクロ経済指標の発表期に当たる。主要なものを眺めると(以下はすべて1月分)、2月1日にはADP雇用統計(雇用者数前月比は12月の23.5万人増から16.5万人増に減速予想)やISM製造業指数(12月の48.4から48.0に悪化予想)が発表になる。
また、2月3日には雇用統計(非農業部門雇用者数前月比は12月の22.3万人増から19.0万人増に減速、失業率は12月の3.5%から3.6%に悪化予想)の発表も予定され、これらの多くは景気悪化を示す内容になりそうだ(以上はエコノミストによる予想の集計値であって、筆者の見通しではない)。
唯一、景気の底固さを示しそうなのは、2月3日のISM非製造業指数(12月の49.6から50.5と、50台を回復するとの予想)だ。
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