「土地がない」熊本・菊陽町、半導体バブルで悲鳴 200社の問い合わせ殺到、交通渋滞の解消に全力
菊陽町には、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCK)、富士フイルム九州、熊本ニチアス、SUS熊本事業所などの半導体関連企業がある。TSMC工場建設地の隣にSCKの工場があり、ソニーグループはTSMCと菊陽町に設立した生産子会社(JASM)への570億円の出資を公表している。菊陽町におけるSCKの存在、そしてアップルとの強固な関係などがTSMCの菊陽町進出の決め手になったのだろう。
半導体製造の世界最大手の進出が決まったことで、菊陽町と周辺の地価が急上昇している。2022年の地価調査の結果を見てみよう。全国一の上昇率(31.6%)となった工業地(9-1)は、1平方メートル当たり前年の3万4200円から4万5000円に跳ね上がった。
この10年間の変動率を見てみると、2019年まではマイナスかゼロ圏だったのが、2020年以降1.2%、2.4%、そしてついに2022年には31.6%と急上昇。TSMC進出発表以降、県内の半導体関連産業で工場の新設や増床が相次いでいることが上昇に拍車をかけた。
菊陽町は住宅地(菊陽-3)も8.8%(前年は2.3%)で県内の上昇率トップ、商業地(菊陽5-1)も13.6%(前年は3.9%)で県内1位の上昇率となった。あらゆる用途の地価が急騰しているのである。
問い合わせ殺到も新たな悩み
TSMC効果で菊陽町の名前は全国区の知名度となり、地価はバブル状況となっている。進出発表以降、全国各地から企業立地がらみの問い合わせや相談が殺到している。地元の熊本銀行にはこれまで国内外の半導体関連企業など約200社から「菊陽町に土地を確保したい」といった相談が寄せられたという。
しかし、ここで新たな悩みが出てきている。菊陽町には企業立地のために提供できる土地がほとんどないというのだ。役場の担当者がこう説明する。
「町内の土地の多くは農地を守るために開発が厳しく制限された農業振興地域に指定されているため、企業進出に必要なまとまった規模の空いている土地はほとんどないのです。そのため問い合わせは多くいただいていますが、(TSMC以降に)新たに進出が決定した企業は今のところありません。なんとかニーズにお応えできるように取り組んでいきたいとは思っていますが、すぐというわけにはいかないですね」(菊陽町商工振興課)
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