が、随分と昔に考え出したこの理論は今も当てはまっており、中銀が(短期金利を引き上げることによって)金融政策を急激に引き締めたり、インフレが大幅に高進したりしなければ、債券市場の暴落はないとの見方が強まる。
債券市場の急落はあまり例がなく、あっても下落は穏やかだ。米国で、30年物社債のムーディーズ月間総収益率指数のグローバル・ファイナンシャル・データ(GFD)版で、1年間の最大の下げは(1957年までさかのぼって)1980年2月までの12カ月間のマイナス12.5%だった。
一方、株式では、GFDの月間S&P500総収益率指数によれば、大恐慌時代の1931年5月までの1年間に67.8%の下げがあり、1900年以来、年間の下げが12.5%を超える事例が23回を数えた。
どのような出来事が長期債市場の12.5%(ほど大きい)の暴落を引き起こすかに気づくことにも価値がある。1980年2月までの1年間の下げは、ボルカー氏が1979年に米国連邦準備制度理事会(FRB)議長になった直後に始まった。
同年のギャラップ世論調査によれば、米国民の62%がインフレを「米国が直面する最重要の問題」と見なしていた。ボルカー議長はこれに対処するために短期金利を引き上げすぎて深刻な景気後退を引き起こした。彼は敵を作り、殺害の脅迫さえ受けた。国民はボルカー氏が政治的に逃げ切れるのか弾劾されるのかと気をもんだ。
債券の暴落と株式、住宅の反落はほとんど関係しない
株式市場と住宅市場については、いつか大幅な反落があるだろう。だが、おそらくそれは債券市場の暴落とほとんど関係しないだろう。このことが当てはまっていたのは、過去1世紀(1907年、29年、73年、2000年、07年の各年以降)の米株式市場の大幅な反落と、これまで(1979年、89年、2006年の各年以降)の米住宅市場の大幅な反落だ。
長期債利回りが尋常ならざる低水準となり、歴史的な経験の範囲外だというのは本当だ。が、突然の債券市場の暴落が株式相場と住宅相場を押し下げるシナリオについても同様なのだ。一度も起こったことがない出来事について、自信があるそぶりで予測することはできない。
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