社員を不幸にする組織、幸せにする組織の決定差 科学的に「幸福度の高い組織」をつくる方法

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その考えのもと、当社で開発したのが「応援」システムです。

仕組みはシンプルです。3人を1チームとして、毎朝、AIのキャラクターが出すお題、たとえば「今日、集中して取り組みたいことは何ですか?」などに各々が答える(宣言する)と、それを残りの2人が応援する。チームは自動的にアサインされるため、「自分が応援しなくても誰かが応援するだろう」という無責任状態は生じません。

このように3人1チームの中で「宣言」と「応援」をセットにしたコミュニケーションがとられるようにすると、必然的に「三角形の人間関係」が多く形成されます。すると社内の人間関係が良好かつ円滑になる。人的ネットワークが豊かになり、業績アップなどが期待できるのです。当サービスを導入してから、離職率が大幅にダウンした企業もあります。

1on1と2on1のハイブリッド型面談が効果的

ポイントは「応援」を介して「三角形の人間関係」が多く形成されることですから、AIを使った当サービスを導入しなくても、マネジメントの工夫次第で三角形をつくることは可能です。それが最後のキーワード、④「1on1+1」です。

上司と部下が1対1で密な面談を行うのが、いわゆる「1on1ミーティング」ですが、これではコミュニケーションが2人の間だけで完結してしまいます。そこで1on1ミーティングの後、もう1人に入ってもらって、いったん2on1で面談を行います。そして最後に、元の1on1に戻す。このように、いわば1on1と2on1のハイブリッド型の面談を行うことで、「三角形の人間関係」が形成され、人間関係の良好化・円滑化が望めます。

もちろん「三角形の人間関係」の創出によって、互いを100パーセント理解できるようになるわけではありません。人はみな違うからです。でも、人はみな違うからこそ、それぞれの個性や強みを持ち寄って事業に取り組む意義があるのではないでしょうか。

企業の業績は社員1人ひとりの能力次第、したがって個々人の能力を最大限に伸ばすことが会社の役割。そう考えている企業経営者は多いようですが、大事なところが見過ごされていると思います。

たしかに個々人の能力を引き出すに越したことはありません。しかし、そのためにも何より大事なのは、「ひとりで抱えなくてもいい」「サポートされている」「困ったら助けてもらえる」という絶対的な安心感を社員が持てることです。

なぜなら、主体的に考え、挑戦できる前向きな精神エネルギーとは、こうした組織内の人間関係に対する安心感を最良の土壌として育つものだからです。良好な人間関係、密なコミュニケーションを保ち、互いに助け合いながら働ける組織が、ただ成果を求めるだけでなく社員に幸福を与えることのできる、本当の意味でいい組織といえるのです。

(構成 福島結実子)

矢野 和男 日立製作所フェロー、ハピネスプラネット代表取締役CEO

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やの かずお / Kazuo Yano

2004年から実社会のデータ解析を先行。論文被引用件数は4500件、特許出願350件を越える。『ハーバードビジネスレビュー』にて、開発したウエアラブルセンサが「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介される。開発した多目的AI「H」は、物流、金融、流通、鉄道などの幅広い分野に適用され、産業分野へのAI活用を牽引した。2020年に「ハピネスプラネット」を設立し、代表取締役CEOに就任。博士(工学)。IEEE Fellow。電子情報通信学会、応用物理学会、日本物理学会、人工知能学会会員。東京工業大学情報理工学院特定教授。国際的な賞を多数受賞。著書に『データの見えざる手』『予測不能の時代』(草思社)など。

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