「連合赤軍」当時を知らない30歳の彼が追う理由 最高幹部「森恒夫」を知る人達の取材で見えた事

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

━━「青春と読書」誌で、連合赤軍をモデルにした『レッド』を描かれた漫画家の山本直樹さんと対談をされたのを拝読しましたが、三島由紀夫が肉体を鍛え上げていたのと近しいものを感じたと、佐賀さんは話されていましたよね。

そうなんです。同級生の証言の中にも「なんで彼が剣道をはじめたのかがわからなかった」というのがありました(注:森恒夫は高校時代に剣道部の主将だった)。決してスポーツタイプでもない、文学青年タイプだったのに、と。

━━彼は部の主将だったけれど、剣道の試合には一度も出ていないというのは、本当にそうなんですか?

出ていないみたいですね。それに、たいしてうまくもなかったみたいだけど、練習熱心で。だから、自分自身を鍛え上げることを目的にしていたのか。剣道部でも、みんな隠れて煙草を吸っているのに、1人だけ吸ってないんですね。

現代にも通じる問題がある

━━当時の「森君」に「居場所のなさ」を感じたという指摘があります。本に収録されている高校時代の写真を見ると「森君」は七三分けの髪型で、逮捕時の報道写真のイカツイ短髪とはずいぶん印象が異なります。同級生の証言の中に、大学に入ってから一変したのではないかというのもあります。

その問題というのはあの事件だけではなくて、現代にも通じていると思うんです。たとえばオウム真理教も、優秀な若者たちが、なぜあんなものにハマってしまったのか?

高校時代に勉強漬けになって、自分は何のために生きているのかわからなくなったりして、「自分は何者なんだ」と考えはじめたときにハマってしまったものがオウムだった。こうした問題は、この半世紀ずっと続いてきているように思います。

━━彼らが作った山岳アジトの跡を、佐賀さんが1人で探しに行く章は、サスペンス的な気配もあって、おいおい、1人でこんなところに入り込んで大丈夫? とドキドキしながら読みました(注:群馬県内にあった「山岳アジト」で「連合赤軍」のメンバーは軍事訓練と称した活動を行っていた。この山岳アジトで構成員同士の殺害事件が起きた)。

一度、3年か4年か前にNHKの取材の人たちと「連合赤軍事件の全体像を残す会」の人たちと合同で行くというときに、僕も参加したんです。でも、案内役の植垣康博(元連合赤軍メンバー)さんが途中で転んで、これは危険だというので中止になったんですね。だから、1人だったら気にせず行けるかなと。自分としてはどうしても目にしておきたい場所でした。

次ページ「対話」を重視する
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事