「連合赤軍」当時を知らない30歳の彼が追う理由 最高幹部「森恒夫」を知る人達の取材で見えた事

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━━佐賀さんの書き方も独特で、取材の様子や、話を聞きながら、自分が感じたことを視覚的に書かれています。たとえば、ICレコーダーをどこに置き、それを見た相手の反応を一行、わざわざ書き込んでいたりします。

私がこの本を書くうえで参考にしたのは、森達也さんの『A3』(集英社インターナショナル)なんです。麻原彰晃という1人の人間にスポットをあて、そこからオウム真理教事件、さらに日本社会全体にまで展開していくノンフィクションで、場面を視覚的に伝えるように構成していくということでも参考にしました。

佐賀旭(さが・あさひ)/1992年静岡県静岡市生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部卒業後、早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻ジャーナリズムコース修了。日刊現代入社後、ニュース編集部で事件や政治分野を担当する。2019年退社。以降『週刊現代』『週刊朝日』を中心に、記者として活動している。(写真:朝山実撮影)

会話を重視しながら描く

━━意外というか、佐賀さん自身はこれまであまり読書をしてこなかったそうですが、実際に本を書くのに苦労したことはありましたか。

書き方がわからず、まず(インタビューしたものは)ぜんぶ文字起こしをして、そこに自分が見たもの感じたものを付け足して原稿にしていきました。

大学院の恩師から、そういう不器用さは佐賀君らしいと言ってもらったんですが、苦労したというよりは、それしかできなかったということですかね。

まあ、沢木耕太郎さんの『テロルの決算』とかも読んだのですが、何をもってあそこまで描写できるのだろうかという驚きとともに、これは自分には無理だ(笑)と。だったら自分は会話をベースにして組み立てていこうと、いまのスタイルに至ったという感じです。

いま、こんなふうにしゃべっていますが、僕はどちらかというと話すのが苦手で、だから取材も自分が話すというよりも、聞くほうがあっています。聞きながら応じていくというスタイルです。

(編集担当sさん:)佐賀さんのスタイルというか、会話を重視している部分については、受賞後の食事会の席で、選考委員でもある茂木健一郎先生から「海外のドキュメンタリーではナレーションを入れずに、証言主体で描写するのは自然だ」とおっしゃっていただきました。

(Sさんの話を受けて)そうなんですか、僕はぜんぜん意識していなかったです(笑)。たぶん10年後、20年後だったら、まったく同じ作品は書けなかったと思います。

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