高学歴親が間違う「先回り子育て」の落とし穴 脳を育てるには守られるべき段階がある

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「からだの脳」が育つよりも先に、「おりこうさんの脳」を育ててしまう。そうすると、幼少期は親の言うことをよく聞き優秀だった子どもが、小学校高学年以降に、不登校や不安障害など、こころの問題を引き起こすリスクが高まります。

「からだの脳」がしっかりとした土台を築き、その上に「おりこうさんの脳」、「こころの脳」が乗るのがよい脳育ちのイメージです。「からだの脳」が貧弱に育ってしまうと、後になって「おりこうさんの脳」や「こころの脳」をいくら積んでも、バランスを崩して倒れてしまう危険性があります。

たとえば、2階がリビングの戸建ての家に住むという前提で考えてみてください。皆さんが求めているのは、リビングに置く素敵なソファであったり、大画面テレビだとしましょう。それらをほしいと思うのが間違いだとは思いませんが、1階(=からだの脳)の建物が2階(=おりこうさんの脳)に比べてあまりに小さいと、2階にいろいろなものを詰め込んでしまうと崩れ落ちます。もしかしたら詰め込まなくても、ほんの小さな地震で家は崩壊してしまうかもしれません。大震災が来たら、家族全員がつぶされてしまいます。

1階、つまりからだの脳がちゃんと出来上がっていれば、小学生の子どもは夜になったら寝て、朝になったら起きて「お腹すいた!」と言って朝ごはんを食べる。満足して幸せな気分になって「行ってきます!」と言って学校に行きます。

一見、普通に毎朝起きて学校に毎日行っている子どもであっても、実は朝はまだ半分寝ている子どもを無理やり起こしたり、空腹でない子どもにごはんを食べさせようとしている家庭のほうが圧倒的に多いことが小学校の調査からわかっています。

高学歴親という病 (講談社+α新書)
『高学歴親という病』(講談社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

もしかして皆さんは、からだの脳(1階)育てがうまくいっていない暮らしのなかで、習い事やスポーツ(2階)を無理にやらせてはいないでしょうか。もちろん子どもがやりたいと言えばやらせたいのは親心です。能力を伸ばすことに力を尽くすことは構わないのですが、見落としてほしくないのが「バランスを欠いた脳になっていないか」です。

親御さんに「どんな子を育てたいですか」という話を聞くと、「とにかく丈夫であればいい」と言う人はほとんどいません。規則的に呼吸をして、心拍が速すぎもせず遅すぎもせず、筋力がちゃんとあって、危険から身を守れるぐらいの運動神経がある。夜になったらコテッと寝て、朝になったらパカッと起きて、いつもニコニコ元気いっぱい。そんな子がいいです、と言う親御さんに出会ったことがありません。

しかし、そこが一番大事なのです。そこを土台にすべてが作られるのですから。私に言わせれば、「どんな子を育てたいですか」に対する答えは以下のようになります。

その1.「からだの脳」時代は「原始人のような子」

その2.「おりこうさんの脳」時代は「学校の勉強以外の知識欲がある子」

その3.「こころの脳」時代は「相手のこころを読める子」

成田 奈緒子 小児科医・医学博士、公認心理師

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なりた なおこ / Naoko Narita

子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。http://www.kk-axis.org/

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事