スペースシャトルが「帰還時」だけ滑走路を使う訳 大量に積み込んだ「燃料」に理由があった

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この理論を基に1960年代から1970年代にかけてNASAと空軍はさまざまなリフティングボディの航空機を試作、飛行試験を行っています。同時代のアポロ宇宙船はカプセル型の司令船が大西洋に着水する帰還方法でしたが、リフティングボディの性能を認めたNASAは続くスペースシャトルをみなさんがご存知の翼を持つ形状に設計したのです。

スペースシャトルは、滑走路があれば着陸することができるため、出発地であるフロリダ州のケネディ宇宙センター以外にも、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に戻ってくることができます。2000年のディスカバリー号のミッションでは、ケネディ宇宙センターが帰還時に24日間も強風が続いたため、エドワーズ空軍基地に着陸して地球に帰還したということがありました。

スペースシャトルがカリフォルニア州に帰還すると、新たなミッションのためにフロリダ州に戻るために、特別仕様のボーイング747型航空機の背にスペースシャトルを載せて空輸する必要があります。

親亀の背中に子亀が乗るようなユーモラスな、それでいて勇壮な飛行ですが、なぜスペースシャトルは滑走路から離陸しないのでしょうか? 飛べるはずのスペースシャトルを空輸するのはなんだか効率が悪いようにも思えますし、もし可能ならば、宇宙船はどれも飛行機型にして、宇宙に行くときも宇宙飛行士に負担をかけないほうがよいように思えます。

ロケットは9割が推進剤

ロケットが地上から宇宙へ飛び立つには、大量の推進剤を短時間で燃焼して秒速約8km(時速2万8000kmにもなります)の宇宙速度に達する必要があります。

大きな質量を持ち上げ、加速する力(推力)は、エンジンから噴射される燃焼ガスの量が多いほど、また噴射されるガスの速度が速いほど大きくなります。多くの燃焼ガスを噴射するためには大量の推進剤が必要になるわけですから、一般的な衛星打ち上げロケットは打ち上げ前の重量の90%以上を推進剤が占めています。

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