親に託された「厄介な空き家」実は"宝"である理由 「二度と再現できない」家屋が外国人に大人気

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これを見て日本の伝統的な文化や歴史を愛する人々は、なんとも悲しくなってしまいます。日本人はこういった先祖たちが建てた家を大事にせず、買おうという人も直そうという人もあまりいません。その家の伝統的な素晴らしさには目もくれず、利便性や新しさに注目してしまう。

しかも東京まで電車で2時間もかからないような場所にもそんな古民家が溢れているのです。これを欧米の基準で考えたらビックリするような距離です。電車やバスも激安で通勤も毎日でなければ不可能ではない。車も不要な立地だったりします。そういった貴重な家屋をどんどん破壊して、化学的な素材で造られ10年か20年ぐらいしか持たない家を建ててしまいます。

高度成長期時代から変わらない価値観

日本人は仕事が多忙で、通勤に便利な場所でなければ生活が困るということも理解していますが、それではなぜリモートワークが盛んになる現在、通勤に困らない仕事を探して転職し、郊外のこういった伝統的な素晴らしい住宅に住んで生活の質を上げないのかと疑問に思うのです。

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なぜならアメリカやヨーロッパの北部では、仕事を選ぶ場合にもちろんステータスやお金のことも考慮しますが、まずは生活の質や自分がやりたいことを考えます。

生活の質を左右するのが住む場所や家屋です。ある程度の広さがあって自分好みの景観や自然がある場所を好む人が少なくありません。いくら便利だからといって大都市のマンションに住んで毎日毎日通勤をするのが最高だと思う人は多くはないはずです。

ところがなぜか豊かなはずの日本では、そういった働きバチのような生活が良いと思っている人がまだまだ多いのではないでしょうか。そして親から受け継いだ古い家をタダ同然で他人に譲り、手入れしないで放置してしまいます。

日本の空き家問題が解決しないのは働き方の問題もありますが、日本人の価値観自体が高度成長期時代から変わっていないというのがあるのでしょう。

谷本 真由美 著述家、元国連職員

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たにもとまゆみ / Mayumi Tanimoto

1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて 国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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