親に託された「厄介な空き家」実は"宝"である理由 「二度と再現できない」家屋が外国人に大人気

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そうして放置され30年から40年以上経過した現在では、雨漏りや床が抜けるという悲惨な状況です。修理をするのにも1回に100万円以上の出費がかかります。親は高齢になって介護の費用がかかり、子どもの教育費もバカにならず、頭の痛い問題です。

都内に通勤するのには遠すぎるし、家も古くなり、バブルの頃の流行りを取り入れてカスタマイズしてあるような家だと使い勝手も大変悪かったりします。

「負の遺産」かと思いきや…

さて、このような悩みのタネとなる日本の別荘や住宅ですが、実は他の国の外国人からすると“宝の山”のようなものです。こういった別荘や郊外にある注文住宅で日本人の買い手がつかない物件は、昔風の日本家屋だとか畳の部屋ばかりの家です。

入り口には松が植えてあり、屋根瓦は昔ながらのものでスレート葺きではありません。庭には池があり浮き草が浮いていて、竹垣があったり灯篭があったりもします。日本の若い人だと嫌がるかもしれないタイプの古い家ですね。

ところが他の先進国の人にとっては、こういった家が魅力的に映る物件なのです。このような様式の住宅は海外にはありません。木で造られた引き戸など、西洋の世界ではそういったドアが玄関についていることはまずありません。治安が悪すぎて、そんなドアだと一発で破られて強盗が入ってきてしまうからです。中世以前の時代からそのようなドアがないのです。

そして玄関に入ると靴を脱ぐところが低くなっていて、一段高いところから家に入るようになっています。こういったものも西洋の世界にはありません。しかし日本のこういった家屋には、玄関にはちゃんと靴を入れる靴箱がある。お客様を迎えるために花を生けるスペースもある。玄関からして家にいらっしゃる方のことを考えてあるわけですね。

家の中に入ると木で造った廊下があり、ところどころギシギシと音がし、何十年もかかって磨き上げられた艶があります。昔の木で建築したものなので、新築の住宅にはない味わいがあります。各部屋の柱もたいへん渋く、味のあるものです。

こういった古い家の伝統的な和室は京壁で昔の左官屋さんが丁寧に仕事したもので、西洋の住宅とはかなり異なります。日本の伝統家屋の壁は繊細に造られているのです。

これは実際にヨーロッパやアメリカに行って古い建物を見たことがある方であればよくわかるかと思います。欧米では漆喰の壁があっても塗りが雑で細かいところは荒々しい仕上げなのです。その点、日本の壁は日本の気候に合わせて湿気を吸ったり出したりするようにうまく調整ができるのです。

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