原発事故、供給力欠落で満身創痍の東京電力。危機脱出できても待ち受ける幾多の難題【震災関連速報】


 電力の供給力不足はイコール販売量の減少となり、売上高は後退する。また、エネルギー源として化石燃料への依存度が高まることから、事業採算は大幅に悪化する。

中期計画の修正も必至だ。東電では柏崎刈羽の事故の復旧に一定のメドがついたことを受け、昨年秋、非化石エネルギー比率の上昇と、海外事業強化を柱とする成長戦略を発表。29年ぶりに4500億円の増資にも踏み切った。非化石エネルギー比率としては、原子力を中心に現在の33%を20年度までに50%に高めるとの目標で、現有17基に加え、東通(青森)1・2号、福島第一7・8号の4基の新設計画もある。

原子力は二酸化炭素排出量が少なく環境負荷が低い、というのがその計画の前提だったが、原発の危険性がここまで明らかになった以上、原子力を中心とした国のエネルギー政策自体が問われる事態となっている。計画の推進は難しいだろう。現在、運転再開に向けた準備を進めている柏崎刈羽の残り3基についてさえ、再開には国や地元承認が不可欠であり、今回の事故の影響でその調整に手間取る可能性もある。

電力会社は設備産業であり、社債・銀行融資など有利子負債への依存度が高い。公益事業という特性上、比較的長期、低利で資金調達ができる立場にはある。ただ、今回の事故を受け、S&P、ムーディーズなどの格付け会社はすでに東京電力の格下げを発表した。「地震・津波による電力事業とその信頼性に与える影響、復旧のための巨額コスト、流動性に対する影響などで東電の財務・信用力に与える悪影響を考慮したもの」(ムーディーズ)という。

「収支についてはまだ申し上げる状況ではない」−−。13日夜、震災後初めて記者会見に臨んだ東京電力の清水正孝社長は、こう述べている。社長が「現時点の自分の責務」とする原発の安全確保が実現できていない現状では、その先の見通しがつきにくいのは事実だろう。ただ、この危機の先にも、幾多の試練が待ち受けていることは間違いない。
 

(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)

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