「製造業」が日本経済の起爆剤になるこれだけの訳 モノづくりが得意な国だからこそできること
それは、社会課題解決のために、新たな価値創出を行う「シン・製造業」へ変革することにあります。今、直面しているのは危機だけでなく、変革への追い風になるパラダイムシフトも起きています。たとえば、「データの透明性が重視される時代」であることです。
モノがあふれる現社会では、消費者は「品質がいい」「壊れない」などのモノの機能的な価値だけでなく、機能的価値を含んだモノを利用するという空間全体から得られる新しい体験を期待しており、お金の使いどころは、この体験価値にシフトしています。
これからの製造業ブランドは、社会や人にとっていい価値を提供し続けるという情緒的価値・精神的価値を訴求する考え方に変容しなければなりません。
日本には、この価値において海外企業がすぐには模倣できない分野がたくさんあります。それは、「安全」・「安心」であったり、「清潔」・「クリーン」であったり、「もったいない文化」からくる「リサイクルや廃棄物の極小化」、「おもてなし文化」からくる「温かさ」、「誠実さ」「粋」など、従前から日本人が大切に育んできた価値であり、日本の文化や職人魂から産み出され続けているものです。
ただし、これらが提供されている空間、利用者の体験価値は、数値として表しづらく「目に見えにくいもの」あるいは「見える化しにくいもの」でした。
ところが、デジタル社会では、IoT技術やブロックチェーン技術などにより、データとしての可視化が可能になってきています。
体験型価値の可視化が日本を変える
ここで、日本ならではの価値がデータとして可視化されるこれからの可能性の例を1つ挙げます。
クルマの自動運転に、日本的な「譲り合い」という概念を組み込むことができたらどうなるでしょうか。交通のあらゆる場面で自動運転車が「譲り合う」行動をとり、それにより欧米や中国の企業が開発した自動運転プログラムより、事故の発生が少ない、あるいは、ドライバーのストレスが軽減されるという事実をデータとして示すこととができれば、自動運転プログラムにおける「譲り合い」という日本的な価値を世界が認めることになるかもしれません。
体験型価値がデータとして可視化される技術の進歩によって、「シン・製造業」として、新しい価値空間をどんどん生み出して発信することができるようになり、その価値を改めて認知してもらえるようにもなります。そして、これらの価値空間に関して、ユーザーからの信頼を得続けることができれば、そのコミュニティは拡大していき、「シン・製造業」のネットワークはとても強固なものになっていきます。
これが国内外にわたって、信頼性と透明性を伴っていけば、日本の製造業のブランドは大きく変わっていきます。
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