CO2増で温暖化進むと思う人が科学的にマズい訳 政界・経済界のみの都合で決めるのはとても危険

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また、人間が大量の二酸化炭素を排出しても、地球にはもっと大きなフィードバック機能が備わっています。そもそも二酸化炭素量が増大しても、それらの多くは海に溶けるでしょう。逆に大気中の二酸化炭素が減少すると、海に溶けたものが出てきて補うという、バッファシステム(緩衝装置)もあるからです。

このような現象についての精査を踏まえないと、大気中の二酸化炭素が単純に増え続けるかどうかも決められません。例えば大気中の二酸化炭素が減ることで、植物の光合成活動が弱まり、結果的に人間の食糧が減少する可能性すらあります。現在、地球上の食糧が確保できているのは、二酸化炭素量がこれだけあるからだ、ともいえるのです。

地球温暖化は「長尺の目」で捉えることが重要

人口増大が原因ではなく、二酸化炭素減少や寒冷化による食糧危機が生まれるかもしれません。人間のスケールのみで地球を判断すると大きく誤ってしまいます。

『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(角川新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

地球温暖化は先ほど述べたような「長尺の目」で捉えることが重要です。そうしないと、目先の国内外の政治状況、経済状況に振り回される事態から脱却できなくなります。

日本は二酸化炭素の排出量を26~46%削減することや、SDGs(Sustainable Development Goals)などについて軽々しく約束したりしています。将来、長期にわたって温暖化するという結論を科学の世界がきちんと出していないにもかかわらず、政界・経済界のみの都合で決定していくのはとても危険だと私は考えています。

人間にとって「たいへん困ったこと」があっても、地球にとってはすべてを吸収してしまうような巨大なメカニズムが存在しています。ここで地球も「困っている」と考えるのは、もしかすると人間の自信過剰かもしれないのです。

地球の問題は、もっと長い尺度で眺めていかないといけません。

鎌田 浩毅 京都大学名誉教授・同レジリエンス実践ユニット特任教授

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かまた・ひろき / Hiroki Kamata

1955年東京生まれ。東京大学理学部卒業。通産省主任研究官、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。著書は『100年無敵の勉強法』(ちくまQブックス)、『理系的アタマの使い方』(PHP 文庫)、『新版 一生モノの勉強法』(ちくま文庫)、『火山噴火』(岩波新書)、『地球の歴史』(中公新書)、『一生モノの英語勉強法』(吉田明宏氏との共著、祥伝社新書)などのほか、研伸館との共著に『一生モノの受験活用術』(祥伝社新書)がある。YouTube「京都大学オープンコースウェア」で『京都大学最終講義』動画を公開中。

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