製薬企業が医師に払うお金の知られざる最新事情 製薬マネーデータベースで見る医療界の実態

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国内製薬企業と比べて、外資系製薬企業が奨学寄付金や寄付講座に費やす金が少ないのは、画期的な新薬を数多く抱えているからだ。

では、このような金の受け入れ先である大学の状況はどうだろう。寄付講座の教授の多くは40~50代前半で、将来は主任教授に昇格したいと考えている人が多い。主任教授への昇格は、先輩の主任教授たちが仕切る教授会で決まる。もし、先輩教授たちが、製薬企業との付き合いを気にしていれば、後輩たちは、それに従ったはずだ。

表3は、2020年度、製薬企業から講師謝金などの受け入れが多い広島大学の医師のランキングだ。コロナ禍で講演会などが激減した中、トップの教授は702万円もの金を受け取っている。1回の講演料は10万~20万円程度だから、年間に35~70回の講演をこなしていることになる。診療・研究・教育という医学部教授の本業そっちのけでアルバイトに勤しんでいたのかと思ってしまう。

広島大学所属で製薬企業からもらった報奨金TOP10
表3

医学研究を進めるうえで、医師と製薬企業の協力は欠かせない。一方、医師は自分の懐を痛めることなく、高額な薬を大量に処方できる。製薬企業が「リベート」を渡そうとするのも無理はない。だからこそ、寄付講座、奨学寄付金、講師謝金など、さまざまな名目で金が支払われる。

情報開示の徹底しかない

この状況は日本だけの現象ではない。世界各国が共通に抱える問題だ。結局、この問題に対処するためには、情報開示を徹底するしかない。アメリカでは2014年9月からサンシャイン法に基づき、アメリカの厚生省が製薬企業から個別の医師への支払いを開示し、誰でも検索できるようにした。

ところが、日本は対応が不十分だ。厚労省には、アメリカに追随する動きはない。見るに見かねたわれわれは、独自に「製薬マネーデータベースYEN FOR DOCS」を立ち上げ、2016年度分のデータから開示していることは先に述べた。

医療は医師と患者の信頼関係がなければ成り立たない。この際、広島大学には徹底した情報開示を望みたい。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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