懐かしの「伝説深夜ドラマ」現在の隆盛に至る系譜 深夜ドラマは量、質ともプライム帯に匹敵へ
しかし、何といってもエポックメイキングだったのは2005年にテレ東が金曜深夜に新設した「ドラマ24」枠だろう。当初は「嬢王」「怨み屋本舗」など青年誌連載の漫画原作ドラマがメインだったが、森山未來主演の「モテキ」(2010年)で潮目が変わる。久保ミツロウの原作漫画が持つエッセンスを損なわず、ドラマならではの魅力を追加する形で大根仁が見事に映像化し大ヒット。続く山田孝之主演の「勇者ヨシヒコと魔王の城」(2011年)は、深夜ドラマの制作費の低さを逆手にとった福田雄一の演出がハマり大いに話題となる。
以降、この枠では松田龍平と瑛太のダブル主演「まほろ駅前番外地」(2013年)、柳楽優弥がコメディに初挑戦した「アオイホノオ」(2014年)、脚本・野木亜紀子、演出・山下敦弘、主演・古舘寛治と滝藤賢一の「コタキ兄弟と四苦八苦」(2020年)など、絶妙な役者とスタッフ、題材の組み合わせで、ドラマ好きな視聴者を唸らせる魅力的な作品が次々と生み出されている。
優秀な作り手が「この枠なら面白いことができる」と思って参加し、それが視聴者の「テレ東深夜ドラマ=期待できる」という信頼感に繋がっていく。このいい循環が生まれたのは、ひとえに「低予算でも面白いものを作りたい」という姿勢を貫いてきたからだろう。
同様に、独自の路線で丁寧に深夜ドラマを作ってきたのが毎日放送(MBS)だ。2009年にスタートした「深夜食堂」は、小林薫演じる小さな飯屋のマスターと客との交流を、毎回異なる料理を軸に描く人情ドラマ。若い世代をターゲットにしてきた刺激度の高い深夜ドラマとは異なる静かな語り口が年齢層の高い視聴者にも受け入れられ、深夜ドラマの間口を広げた。シリーズは5作を数え、2016年の第4部からはNetflixオリジナルドラマとして世界190カ国へ配信されている。
ほかにも山田孝之主演の「闇金ウシジマくん」(2010年)や、林遣都、桐谷美玲、小栗旬といったプライム帯で主役級の役者を揃えた「荒川アンダー ザ ブリッジ」(2011年)など、見応えのある作品を送り出してきた。
多種多様に増殖する深夜ドラマ
こうした深夜ドラマ発のヒット作増加や、TVerの見逃し配信、各局の動画配信プラットフォームの整備などが進んだことをきっかけに、2010年代以降、各局で深夜ドラマ枠が次々と新設された。
テレビ朝日は2017年に「土曜ナイトドラマ」枠を復活させ、社会現象を巻き起こした「おっさんずラブ」(2018年)や、「妖怪シェアハウス」(2020年)などを放送。テレ東も2017年、土曜深夜に「ドラマ25」枠、2020年には水曜深夜に「水ドラ25」を新設。MBSは深夜ドラマに特定の枠を設定していなかったが、2016年に「ドラマイズム」枠を新設。木村文乃と岡田将生を起用した「伊藤くんAtoE」(2017年)や、杉野遥亮の初主演作となる「スカム」(2019年)などを制作。2019年からは木曜深夜に「ドラマ特区」を設定し、さらに深夜ドラマに力を入れている。
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