フードロスを生む「資本主義」を分解する人の挑戦 「おいしい」「うれしい」と思える仕組みを作る

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そこで私、鴨志田さんのCSAに参加して、コンポスト実践者になりました。いやいや本当にすごいです、なんだか感動的です。

鴨志田さんから届いたのは、長方形の押し入れケースみたいな形のコンポストケース。落ち葉や籾殻などの床材がケースの4分の3くらいまで入っていました。そこに日々、普通の家よりはかなり多めの生ごみを入れて、はや4カ月ほど経ちました。

たっぷり1日分の茶がら・玉ねぎの皮・キャベツの芯・きゅうりのしっぽ、果物の皮。大きめボウルに1杯ずつ程を入れて4カ月以上経っているのにあふれない。というかドシドシ馴染んで量は減っているよう。

スイカの皮は丸々4玉分超え、卵の殻は100個以上も食べちゃっているコンポスト君、大食漢なのに太らない。回収に出すごみから生ごみがなくなり、これまでの半分以下の量になりました。

「ごみやロスを出さないためにできることは何?」という義務感や使命感のようだった気持ちが、コンポスト君とともに「自然の循環に参加している」ようで、明るくなりました。

鴨志田農園では、畑でとれる作物が食卓へ、食卓から出る生ごみのコンポストが畑へ……と循環するコミュニティをつくっていますが、鴨志田さんがおっしゃるには、「うちの畑の規模で直接つながることができるコミュニティは、せいぜい百数十件」だと。その小さな循環の輪をあちこちにつくっていき、普遍化していこうという考えにも共感します。大きくすることだけがいいんじゃない。小さな、元気のいいローカルのコミュニティが増えていくこと、大事ですものね。

食べ物がごみになるという負の現実を隠さない

京都大学准教授の藤原辰史先生は、今回の本をつくるにあたってご一緒した対談で、料理研究家である私がフードロスという「食文化の暗部」に着目することの意義を話してくださいましたが、実はこれ、鴨志田さんの活動にも、「ばんざい東あわじ」の本川誠さんの活動にも共通する点です。

1日3回の「食べる」という行為のリアルなところ、つまり、食べ物がごみになるという負の現実を後ろに隠すのではなく、表に引きずり出してプロの目線で考え、仕事をしている。食のよいところだけしか見ずに目をつぶることとは、そのつけを、必ず誰かが払わされるということ。その誰かとは未来の人たちなんだということを、改めて今の私たちが考えていくべきなんですね。

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