フードロスを生む「資本主義」を分解する人の挑戦 「おいしい」「うれしい」と思える仕組みを作る

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そういえばSDGs(持続可能な開発目標)も、最近では、企業活動にいいように利用されているといったネガティブな面が語られることが多いですが、私は、日本国憲法前文を読むような気持ちになるときがあります。

書かれていることに命を吹き込んでいくのは、それを実際に進めていく私たちなのかもしれないですよね。1g1円のお総菜を提供する「ばんざい東あわじ」や、高齢の方のお宅の電球1個の交換から始めたというお手伝いサービス、居場所のない子どもたちのために開いたまかない付きの塾など、本川さんたちが今やっていらっしゃるいろいろな活動が、何だかSDGsのおおもとにあるような、人や地域や未来を思う力に支えられているような気がしました。ご自身の幼いころのしんどい経験を、具体的な取り組みによって昇華させてきた説得力を感じます。

「料理することは自己肯定感を高めてくれる」

初対面の本川さんが「僕は右肩上がりの成長っていうのが嫌いなんですよ」とおっしゃったときには、あまりにも私と一緒で「抱きしめたい!」と思ったくらいでした。

実際、本川さんが「狭い範囲のエコシステム(生態系)を成り立たせていく」という考えで進めている事業の数々は、右肩上がり信仰から逃れられない今の社会システムを、具体的な小さな現場から変えていくものだと思います。

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今、多くの人は、もう右肩上がり社会の成長の限界に気づいていて、そのことに目をつぶって生きていく不安に耐えられなくなっているように感じます。でも、どうすればよいのかがわからず、だって仕事なんだからしょうがない、やり続けるしかない、と思い込んでいるのではないかと。

本川さんが地域の子どもたちのために開いたスペースでは、ゲーム感覚で料理スキルを学んでもらうという活動もしていますが、そのわけは「料理することは自己肯定感を高めてくれる」からだと。もう、そうそうそう!と大きくうなずいちゃいました。

それは、自分の暮らしを大事に思えるようになるということ。一見つまらない三度のごはんのようなところに、小さな自己肯定感の種がある。一人ひとりが自分に嘘をつかず、「しょうがない」と目をつぶらず、変わっていける可能性がある。そんな展望に、私自身も力をもらった気がしました。ブラボー!って思いました。

枝元 なほみ 料理研究家

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えだもと なほみ / Nahomi Edamoto

横浜市生まれ。劇団の役者兼料理主任、無国籍レストランのシェフなどを経て、料理研究家として活躍。一方で、農業支援活動団体である一般社団法人「チームむかご」を立ち上げたり、NPO法人「ビッグイシュー基金」の共同代表も務め、雑誌「ビッグイシュー日本版」では連載も。2020年に、フードロスと貧困問題の解決にチャレンジするため、営業時間終了直前に売り切れなかったパンを引き取って、同雑誌の販売員や、そのほか仕事がない人たちが販売する仕組みを実践する「夜のパン屋さん」をスタートする。また、子どもたちの給食を有機食材にするための活動にも心血を注いでいる。著書多数。

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