「安保3文書」決定は台湾有事を煽る外交敗北だ 日本の衰退を加速させる一方の防衛費増額

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安保3文書は、バイデン政権が進めてきた台湾問題を対中対立の核心に据え、「及び腰」だった日本を台湾問題に主体的に関与させる長期戦略(グランドデザイン)の「中間決算」である。日本の戦争態勢への移行が、わずか2年足らずで完成したのは驚きだ。グランドデザインの最終目標は「自主防衛」にある。

そこでまず、バイデンの戦略とこの2年の日米関係を振り返る。バイデン政権の対中・台湾政策の狙いは、2022年2月に発表した「インド太平洋戦略」(『台湾有事で日本を主役にするバイデン政権の思惑』)に詳しい。総合テキストだ。バイデン氏の「国家安全保障戦略」(2022年10月)のアジア太平洋版がこのリポートである。

まず戦略は、台湾問題を前面に据え「アメリカ単独では中国と対抗できない」との認識から、日米同盟をはじめ同盟・友好国との「再編強化」がカギと強調。そして戦略は「少なくとも10年に及ぶ長期計画」として、具体的に次の3点を挙げた。

日米で防衛費倍増を明記

① 対中抑止を最重要課題とし、同盟国と友好国がともに築く「統合抑止力」を基礎に、その中核として日米同盟を強化・深化する。日米豪印4カ国による「クアッド(QUAD)」と、米英豪3国の「オーカス(AUKUS)」の役割も鮮明にした
②「台湾海峡を含めアメリカと同盟国への軍事侵攻を抑止する」と明記し、軍事的な対中抑止の前面に台湾問題を挙げた
③ アメリカ軍と自衛隊との相互運用性を高め「先進的な戦闘能力を開発・配備」と明記

ここまで読めば、安保3文書にある敵基地攻撃能力の保有をはじめ、防衛予算の倍増、アメリカ軍と自衛隊の「相互運用性」強化の意図と背景がより鮮明に見えてくるはずだ。

この戦略に基づいて、日米同盟の強化はどう進められてきたか。2021年4月ワシントンで開かれた菅義偉・バイデン首脳会談は、①台湾問題を半世紀ぶりに共同声明に盛り込み、日米安保の性格を「地域の安定装置」から「対中同盟」に変質、②日本が軍事力を飛躍的に強化する決意を表明③台湾有事に備えた日米軍事共同作戦計画の策定、で合意した。

これを受け2022年5月の岸田・バイデン首脳会談の共同声明は、①日米同盟の抑止力、対処力の早急な強化、②日本の防衛力を抜本的に強化し防衛費を増額、③日米の安全保障・防衛協力を拡大、深化、④アメリカ側は日本防衛への関与と(核を含む)拡大抑止の再確認、をうたうのである。②が、安保3文書に具体的に盛り込まれたのがわかる。

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