「管理職になりたい日本人」極端に少ない根本理由 職場コミュニティからはみ出てもいいことない

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職場が重要なコミュニティである日本人にとって、親しく声をかけてくれ、大事な情報を教えてくれ、お茶や食事に誘ってくれる仲間ほど大切なものはない。そうした関係が絶たれたり、よそよそしくなったりしたら、たいていの人は耐えられないだろう。

公益通報者保護法は2020年に改正(2022年6月施行)され、保護の対象や保護の内容を拡大するなどいっそう強化されているが、欧米企業のドライな組織ならともかく、日本企業のような共同体型組織の特徴を考えたら、「糠に釘」に終わる可能性がある。

現状を変えようとすることは「迷惑」

何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造 (PHP新書)
『何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造 (PHP新書)』(PHP研究所)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

このように日本企業のような共同体型組織では、何かに挑戦すること、現状を変えようとすること、突出することは多くの場合、周りの人にとって迷惑なのだ。そのため人間関係が疎遠になったり、ときには反発や敵意を招いたりする。あえて挑戦し、失敗したら孤立無援になりかねない。

それでも摩擦を覚悟で挑戦するに値する有形無形の報酬があれば、多くの人は挑戦するはずだ。現在の日本では、リスクを冒し挑戦しても獲得できるものの価値は大きくない。やってもやらなくても大差がなければ、人間関係の摩擦や周囲の冷たい視線から受けるストレスを計算に入れたら「やらないほうが得」と考えてしまう。

ただ組織にとって挑戦や改革は不可欠であり、「何もしないほうが得」になる組織の構造が健全でないことは明らかだ。そこにどうメスを入れ、構造を変えていくかは、次章以下で詳しく述べていきたい。

太田 肇 同志社大学名誉教授

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おおた はじめ / Hajime Ohta

兵庫県出身。同志社大学名誉教授。経済学博士。主な研究分野は個人を生かす組織・社会づくり。日本における組織論の第一人者として著作のほか、働き方改革や社員のモチベーションアップなどに関するマスコミでの発言、講演なども積極的にこなす。また猫との暮らしがNHKで紹介されるなど、愛猫家としても知られる。著書は、『日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか』(集英社新書)、『「自営型」で働く時代』(プレジデント社)、『何もしないほうが得な日本』(PHP新書)、『日本人の承認欲求』(新潮新書)など40冊以上あり、大学入試問題などに頻出している。『プロフェッショナルと組織』(同文館出版)で組織学会高宮賞、『仕事人と組織』(有斐閣)で経営科学文献賞、『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)で中小企業研究奨励賞本賞を受賞。

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