元宝塚トップ「望海風斗」下積み時代の葛藤と転機 全員エリートの中でたどり着いたトップへの道

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

花組とはカラーの違う雪組に組替えし、演技派のトップスター、早霧せいなのもとで2番手をつとめたことは、想像していた以上に望海さんに大きな刺激を与えた。

「自分を知らない人の中に飛び込んでいくのはすごくエネルギーがいることでした。最初はみんなが“この人はどうやって芝居するんだろう?”って見てくれますしね。その中で自分を出していくことで、加速させてくれた感じがあります」

衝撃的な出会いもあった。2016年に外箱で主演した「ドン・ジュアン」。モーツアルト作のオペラ「ドン・ジョヴァンニ」で知られる「ドン・ジュアン伝説」を元にしたミュージカルで、望海さんが演じたのは稀代のプレイボーイとして知られるドンファン=ドン・ジュアンだ。舞台の前半は快楽を追い求め女を食い散らかすような宝塚らしからぬ主役像で、激情をぶつけるような演技と大迫力の熱唱で、劇場を揺らした。

「あんなに達成感を味わったことはなかった。最後にドンジュアンが死ぬ時、毎公演、私ももうこのまま終わってもいいや、と思えるほどでした。おそらくいろいろなタイミングが重なって、あの時だからできたものだったと思うんですが、自分にとって一つのターニングポイントになりました」

トップスター就任。女性ばかりの集団の統率術は?

2017年、ついに雪組トップスターに就任。相手役の娘役トップ、真彩希帆(まあや・きほ)とは、当代一の歌唱力を誇るコンビとして注目を集めた。約70人の組の仲間の頂点に立つ身として、意識していたリーダー像とはどんなものだったのか。

「自分が一番大事にしている“楽しむ姿”を見せたいと思っていました。今の若い子たちって、すごく意味を考えるんですよ。この役の意味とか、与えられた役割とか、一つひとつその理由をしっかり考えようとする。それはいいことだけれど、私は意味もなく楽しむ時間も必要だと思うんです。最後は全て手放して舞台に立ってほしいなという思いがあったので、それを自分が率先して体現していければと考えていました」

“フェアリー”であるタカラジェンヌに「年齢」の話題は御法度だが、実際には約70人のうち入団1、2年目には10代の生徒もおり、生徒の年齢層は非常に幅広い。女性だけの集団では、下級生への指導や助言にも細やかな心配りが必要となる。

「何気ない会話はなるべく多くするように心がけていました。ただ、アドバイスという意味では、トップがかける言葉って重いと思うんです。私自身も下級生時代にはトップさんからかけてもらった言葉はとても大きかったですから。

無責任に言ってしまうとそれが彼女たちの宝塚人生に大きく影響してしまうこともある。何か気になることがあったときは、私が直接伝えたほうがいいのか、ワンクッション置いたほうがいいのか、少し年齢の近い子に一度相談することを心がけていました。彼女たちが自発的に取り組んでいることに対して、少しでも背中を押してあげられればいいな、という思いでした」

次ページ皆の気持ちがバラバラになりそうな時に心掛けたこと
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事