サッカーW杯に賭けた「アベマ」、黒字化への高い壁 日本対クロアチア戦「2400万視聴」の真価

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サイバーエージェントの藤田晋社長はアベマを「10年がかりの投資」と位置づける。11月にも転換社債の発行で400億円の調達を表明。最大200億円を満期転換社債の償還資金に充て、残りをアベマの運転資金などに使うという。

またここ数年はアベマの赤字額がやや縮小傾向にあり、藤田社長は「2020年度より損失改善のフェーズに入った」と強調する。ただ、W杯放映権料やそれに伴う広告費などを鑑みると、今2023年9月期は再び赤字が拡大する年になりそうだ。同社の宮川園子IR室長は「放映権料を含めたW杯関連費用は第1四半期(10〜12月)ですべて計上する予定」だと話す。

黒字化には売上高を倍増させる必要性

ここで問題となるのは、アベマがゲーム事業での稼ぎに頼る構図から脱し、投資回収フェーズに本当に入れるのかということだ。いちよし経済研究所主席研究員の納博司氏は次のように指摘する。

「今回のW杯で大きな視聴数を集めたことで一定の評価を受けたのはよいが、求められるコンテンツのレベルが上がった。上がったハードルを下げるわけにはいかず、今後もレベルの高いコンテンツを調達していく必要がある。決して楽観的には見ていない」

実際、メディア事業全体を黒字化するには現状の2倍近い2000億円前後の売り上げが必要(2022年9月期実績は1121億円)とみられる。そうした状況で、黒字化に向けた収益源として大きな期待をかけているのが「周辺事業」だ。

周辺事業の1つとして藤田社長が強調したのが「WINTICKET」という競輪・オートレースのインターネット投票サービス。アベマの開始と併せてゼロから始め、5年程度でインターネット投票のトップシェア36%を獲得している。

窪田氏は「周辺事業が伸びてきたことで、アベマの黒字化が本格的に見え始めた。次の安定収益源になっていく可能性もある」という。

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