サッカーW杯に賭けた「アベマ」、黒字化への高い壁 日本対クロアチア戦「2400万視聴」の真価
さらに、有料配信サービス「ABEMAプレミアム」の会員数の拡大も不可欠だ。
2020年末時点での会員数は92.1万人で、現状は130万人程度と推計される。仮に年間20万人程度のオーガニック成長があるとすれば、「10年」のタイムリミットに向けた残り4年近くで達成できる会員数は210万人程度。現状比2倍の260万人まで拡大させるには、年間30万人超の会員純増が必要な計算になる。
そのためにも、サッカーW杯というキラーコンテンツを起爆剤にして、集客した視聴者をいかに有料会員へと転換させることができるかが、今後の試金石になる。
サイバーエージェントは冒頭の通り、日本対スペイン戦などが生中継された12月2日、アベマの1日当たりの視聴者数が過去最高を更新したと発表。また、12月5日(現地時間)に開催された日本対クロアチア戦のアベマ視聴数(累計アクセス回数)は、2400万超といわれる。そのうち3割程度が実際のユーザー数と仮定すると、有料会員への転換率は少なくとも2%程度はほしいところだろう。
そのアベマはW杯後の戦略もすでに打っている。人気の高いサッカー英プレミアリーグ2022-2023の114試合を8月から放送しているのだ。プレミアリーグは前回まで有料配信サービス「DAZN(ダゾーン)」が放映権を取得していたが、アベマでは一部をプレミアム会員限定、それ以外を無料で放送。今回のW杯で関心をもったサッカーファンの定着を狙っていることがうかがえる。
無料配信を軸にいかにマネタイズするか
課題はまだある。1コンテンツごとに有料でオンラインライブなどを視聴できるPPV(ペイ・パー・ビュー)でいえば、コンテンツ次第で視聴数などが大きく変わるため、収益がまだ不安定というのが実情だ。利益率の高い広告収益についても、アベマを黒字化するには売り上げを2倍にする必要があるとみられる。
W杯をきっかけにして、アベマは視聴者層のすそ野をどこまで広げることができたのか。今後の伸びしろを含めて、広告主によほど説得力のあるデータを得ていないと、広告収益の倍増は望めないはずだ。
「W杯全試合無料放送」という、賭けにも映る大きな投資によって一気に認知度を向上させたアベマ。悲願の黒字化に向けて、今後まさに浮沈を左右する正念場を迎えることになる。
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