廃車を解体して再資源化「鉄道リサイクル」の実態 人目に触れない「重要事業」をどう行っているか

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鉄道車両廃車解体の様子
工場内で解体される鉄道車両。この後は鉄や銅などの資源に生まれ変わる(写真:日本総合リサイクル)

鉄道車両が工場で組み立てられたり、完成後に車両基地に運び込まれたりといった、鉄道車両ができるまでの過程をテレビやインターネットのニュースで見たことがある人は多いだろう。

では、役割を終えた車両はどうなるか。JRや大手私鉄の車両の中には、地方の中小私鉄や第三セクター鉄道に移管されて引き続き運行を続けるものもある。だが、こうした車両は全体から見ればごく一部にすぎない。大半の車両は解体されて、鉄、非鉄金属、レアメタルなどに再資源化され、国内の製造業に売られていく。誰がどのようにこの業務を行っているのか。ここで紹介するのは、富山県高岡市に拠点を置く、あるリサイクルメーカーの話である。

もっとスマートにリサイクルできる

「まだ、こんなふうにやっているんだ」――。

富山県内で自動車などの資源リサイクル事業を手掛ける豊富産業の高倉康氏(やすし)社長(68)が、思わずこんな感想をもらした。今から20年ほど前、高倉社長が関東のある鉄道事業者の車両工場を訪れたときのエピソードである。

作業が行われていたのは屋外だった。解体時に埃が発生しないように水を撒き、作業員は車両の床下に潜り込んで機器類をはずしていた。

現場のすぐそばには大型のスーパーマーケットがある。解体作業で生じる音や振動が気になるし、人の手に頼る作業は危険を伴う。「自分たちならもっとスマートに、もっときれいにリサイクルできるのに」。2002年に自動車リサイクル法が公布され、自動車の解体、再資源化の基準が厳格化された。豊富産業グループの1社、日本オートリサイクルは屋内の工場で、マルチ裁断機などの大型重機を駆使して作業を行う。危険は少なく短時間で作業が終わる。防音対策を施した屋内での作業は、音や振動が周囲に漏れることもない。

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