廃車を解体して再資源化「鉄道リサイクル」の実態 人目に触れない「重要事業」をどう行っているか

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また、JRや大手私鉄各社は、古くから付き合いの深い業者に車両の解体作業を発注していた。そこに割って入るのは容易ではない。そうすると、受注できるのは、競争入札で業者を選ぶ公営や半官半民の鉄道事業者が中心となる。ただ、高岡までの陸送費用が上乗せされるため、「入札では勝ったり、負けたりという状況」という。

日本車両リサイクルという社名についても、ある大手鉄道車両メーカーからクレームがついた。自分たちの会社と社名が似ていて紛らわしいので、社名を変更してほしいというのだ。高岡社長からすれば、グループに日本オートリサイクルがあるのだから、鉄道やバスの車両リサイクルを行う会社の名前を日本車両リサイクルにしたのは当然だった。設立に際しては事前に商号や商標を調べて、問題ないと判断した。釈然としない思いはあったが、「将来お客様として仕事でお付き合いするかもしれない」と、一歩引いて相手の要求を呑んだ。2013年5月、日本総合リサイクルに社名変更した。

もっとも、社名を「総合」に改めたことでビジネスの幅が広がった。たとえば、バス車両。買い取った中古バスを再資源化するだけでなく、中古バスのまま販売するというビジネスが拡大している。バス事業者や、送迎などに自家用バスを使う学校など全国から引き合いがあるという。「当社敷地の広いスペースを使って、試し乗りできるのがメリットの1つ」(高倉社長)。

今年11月には豊富産業グループとして、日本航空と組んで大型旅客機「ボーイング777」を解体し、リサイクルするという国内初の試みを行った。通常、現役を終えた航空機はアメリカの解体業者の元に運ばれて解体される。これが国内で解体できるとなれば、資源の有効活用につながることに加え、航空会社にとっては機体をアメリカに運ぶための燃料代を節約できる。将来的には大手商社と組んで別会社を設立し、国内だけでなくアジアにおける航空機リサイクルに事業を拡大するという構想もある。

鉄道リサイクルだけでは採算が取れない

では、鉄道車両のリサイクル事業を今後どのように拡大させるか。鉄道事業者が多い関東や関西に工場を造れば、車両陸送コストが削減され、コスト競争力が高まる。しかし、高倉社長は、「工場建設についてはほかの事業での活用も含めて総合的に考える必要がある」と慎重だ。鉄道事業者に近い場所に新工場を造っても、鉄道車両リサイクルだけでは工場の収支が合わないからのようだ。

鉄道車両リサイクル事業を拡大するためには「自分たちの強みを磨いていくしかない」と気を引き締める。では、「強み」とは何か。

その答えを知るため、12月8日、高岡市内の工場を訪問した。関東のある鉄道事業者の車庫から車両が12月5日に搬出され、12月7日に到着した。その車両が解体され、リサイクル資源となるまでの様子を取材した。

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