20代を犠牲にしてわかった怪しいビジネスの裏側 なぜ真面目で仕事のできる人が闇落ちするのか

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実際に番組を観ているうちに、ドナは奇妙な感覚にとらわれた。教会のリーダーの話し方……ピラミッド型の組織……。まるで、この1年の自分の人生が映像化されているような気分だった。

約束されていた「簡単で楽しい」仕事と、まったく利益が得られずに苦しんでいる現実との乖離。サポートをしてくれない仲間。「乳幼児の世話をしながら、仕事も順調」という耳を疑うような同僚の主張。これらの異常な体験は「私はこの組織に搾取されている」という新しいパラダイムで見るとすべて理解できた。

ブラックな環境を抜け出す3つのポイント

疑念を抱いたドナが、ネットでMLMの実態を見つけ出すのに時間はかからなかった。自分と同じような立場の人たちが書いた「何年もMLMのためにまじめに働いたにもかかわらず、借金だけが残った」という体験談もたくさん目にした。

真実を知ったドナは泣き出した。それでも、少なくとも彼女が失ったのは、2000ドルと1年という時間だけだった。

◎自分が予想していたものとは違う異常な何かの存在に気づけるか?
◎その異常を合理的に説明しようとするとき、どこかに無理があると察知できるか?
◎「自分は混乱している」と認識できるか?

これらはMLMに加入した人間が、数カ月でそこから抜け出せるか、それとも何年もはまり込んでしまうかを分ける重要なポイントになる。

しかし、「ネガティブな考えを持つと失敗する」とリーダーに言い聞かされているMLMのメンバーの多くは、こうした疑問から目を背けようとする。

利益が出ないときに「フルタイムで働いているのに赤字になるなんておかしい」ではなく、「自分の努力が足りないからだ」と考えてしまう。

多くの場合、「パラダイムシフト」と呼ばれる大きな考え方の変化も、不可解な観察結果が時間をかけて蓄積されていくことで起こるものだ。

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