20代を犠牲にしてわかった怪しいビジネスの裏側 なぜ真面目で仕事のできる人が闇落ちするのか

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パラダイムシフトという言葉は、もともと、哲学者のトーマス・クーンが『科学革命の構造』で提唱した、科学が進歩をする具体的な方法を表現する言葉である。現在では既存のアプローチを大きく変えることを意味する言葉として頻繁に用いられるようになっている。

「異常」を例外やミスとして無視しない

パラダイムシフトのサイクルとは次のようなものだ。まず、誰もが真実だと思い込んでいる核となる信念(パラダイム)がある。

だが時間の経過とともに、そのパラダイムに当てはまらないような異常な現象が観察されるようになる。

科学者たちは最初のうちは、これらの異常を例外や間違いとして無視したり、新しい観察結果に合わせてパラダイムを少しずつ修正したりする。だが異常が蓄積されていくにつれて混乱は大きくなり、既存のパラダイムでは対応できなくなる。ついには誰かが新しいパラダイムを考案し、再びすべての現象が矛盾なくそこに収まるようになる。

私たちの人生におけるパラダイムシフトのルールも、科学の世界のそれと同じである。異常な現象に遭遇したら、たとえ簡単には説明がつかなくても、既存のパラダイムが全体的には正しいと思えても、その存在から目を背けず、認めていくべきだ。もしかしたら、世界観を大きく変容させる土台になるかもしれないのだから……。

想定外の結果に遭遇したら、それを既成の理論に当てはめようとするのではなく、新しい理論を構築するための手がかりとして扱ってみよう。

SF作家のアイザック・アシモフは、こう言ったという。

「科学の世界で、新しい発見を告げるもっともエキサイティングな言葉は、“分かった!”ではなく、“何かがおかしいぞ……”だ」

ジュリア・ガレフ 作家、ポッドキャスター

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Julia Galef

「応用合理性研究センター」共同設立者。10年にわたってポッドキャストの番組「Rationally Speaking(合理的な話し方)」のホストを務め、高名な科学者、ジャーナリスト、さまざまなジャンルの識者・思想家へのインタビューを行なってきた。『マッピング思考』(東洋経済新報社)はその集大成として、人間の心が持つ合理性と非合理性、客観的思考を俯瞰した作品。全世界で翻訳出版され、たちまちベストセラーとなっている。

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