「知の深化」バイアスに陥らないための視点とは パーパスブームから両利きの経営を問い直す

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日本でも注目されている「パーパス」について、「両利きの経営」の観点から考えます(写真:metamorworks/PIXTA)
既存の業界秩序が破壊される時代、既存事業の「深化」により収益を確保しつつ、不確実性の高い新領域を「探索」し、成長事業へと育てていく「両利きの経営」が欠かせない。
この「両利きの経営」研究の第一人者であるチャールズ・オライリー、マイケル・タッシュマンの『両利きの経営──「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』が、2019年2月に刊行され、日本のビジネス界でも大きな話題になった。昨今、新たに2章分が加わった増補改訂版が翻訳出版された。
本記事では、解説者を務める経営共創基盤グループの冨山和彦氏と早稲田大学教授の入山章栄氏が、今回の増補改訂のポイントである企業文化として、日本でも注目されている「パーパス」について対談した。

「パーパス」ブームの背景を探る

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冨山:最近、パーパス経営とよく言われますが、実はまだ自分の中でちゃんと昇華されていません。ビジョンを言い換えているようで、ストンと腹に落ちてこないのです。

入山:それはよくわかります。一応、パーパスのほうが、ビジョンよりも一段崇高な概念のようになっています。要するに、SDGs(持続可能な開発目標)の時代なので、社会全体にどう貢献するかがパーパスだと。でも、いい経営者はビジョンや理念でそういうことを普通に言っていますよね。

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