「知の深化」バイアスに陥らないための視点とは パーパスブームから両利きの経営を問い直す

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入山:グーグル日本法人社長の奥山真司さんが、前職の江崎グリコのCMO(最高マーケティング責任者)だったときに、講演に来ていただいたことがあります。

そのときに奥山さんは、当社はもともとグリコーゲンの会社で、戦後の栄養失調の子どもたちが多くいて、その栄養補給としてグリコーゲンを広めたのだと、冒頭で話したのです。CMOになって1年目なのに、いきなりグリコのパーパスを語るのかと驚きました。

それは奥山さんが前職のP&G時代に身につけた作法なのでしょう。グローバル企業のほうが、そういう創業者の思いやパーパスを大事にしていて、当社は何のためにあるかを最初に言うのかなと思いました。

歴史を大切にすることの合理性

冨山:僕も社外取締役になるときには、その会社の歴史を徹底して頭に入れます。そうしないと、会社の人に対して強気で語れないから(笑)。グローバル企業で実践しているのも、そういう知恵だと思います。

まずは根本論で語る。そこから出てきた細かな話は会社に長くいる人のほうが知っているけれども、彼らは意外と根本を忘れていて、派生してきたものが金科玉条みたいになってしまう。

たぶんP&Gやジョンソン・エンド・ジョンソンなどのグローバル企業は、いろいろな人をガバナンスするために、理念を掲げる。多くの場合、宗教や人種の壁を超えることが多いからで、そこにはある種の合理性がありますね。

(構成:渡部典子)

冨山 和彦 経営共創基盤(IGPI)グループ会長

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とやま かずひこ / Kazuhiko Toyama

経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学MBA、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。共著に『2025年日本経済再生戦略』などがある。

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入山 章栄 早稲田大学ビジネススクール教授

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いりやま あきえ / Akie Iriyama

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年にピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーを経て、2019年より現職。専門は経営戦略論、国際経営論。著書に『世界標準の経営理論』などがある。

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