「知の深化」バイアスに陥らないための視点とは パーパスブームから両利きの経営を問い直す
入山:以前、冨山さんは30年先を見ているとおっしゃっていましたが、僕の周りのいい経営者やビジネスリーダーはみんな20年、30年先を見ていらっしゃいます。
パーパスなき事業経営はありえない
冨山:でも、30年って、わりとあっという間に来てしまいますよ。
入山:だからこそ、そのときにSDGsが道具として使える可能性があると思っています。なぜかというと、変化が激しくても、10年、20年先まで変わらない問題があるから。
たとえば気候変動問題は、来年に解決することはありえないし、貧富格差も同様です。では、20年後、30年後まで、私たち人類が残しそうな課題を、ビジネスでどう解消するか。まさに外部化の問題をどう内部化するか考えれば、それがイノベーションになるし、腹落ちもすると僕は解釈しています。
冨山:今のネットやテレビ電話も、昔は、こういうものができたらいいな、そうしたら、事故も起きないのにと思ったはずです。携帯電話もなかったから、『君の名は』が成立する。
入山:ずいぶん懐かしい(笑)。橋の上で待ち合わせをするけれど、すれ違いで会えない話ですよね。今はグーグルマップを見ていますから、そんなことは起こらない。
冨山:スマホがない時代には、そういう悲しいことが起きていたけれど、なんだかんだいって世の中は便利になってきて、いろいろな問題を解決している。それがずっと繰り返されてきました。
入山さんがおっしゃるように、市場化できるのは、その対価を払える人のお困り事に対応できているから。もちろん、場合によっては、お金を持っていない人の困り事に対応しなくてはいけなくて、それは外部性になりやすいけれど、どちらかというと、社会制度や社会保障の話ですよね。