「公園閉鎖問題」苦情住民だけが悪いと言えない訳 「騒音トラブル」に潜むいくつもの重要な問題点

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今回の「青木島遊園地」の場合、近隣からの騒音苦情を受けて、市側は遊具を移設したり、出入り口の位置を変更したり、苦情者宅との距離をとるため遊園地の一部に植栽をしたりしましたが苦情は収まりませんでした。そして、最終的には遊園地の廃止を決めたのですが、これらはすべて防音対策であり、煩音対策ではありません。

遊園地が出来て18年が経ちますが、いまだに苦情者側の被害者意識が解消されていないことを考えれば、十分な煩音対策がなされてきたとはいえないのではないでしょうか。防音対策をやる場合でも、それは煩音対策のための防音対策でなくてはなりません。

騒音問題は「相手との人間関係」の問題

繰り返しになりますが、うるさいと思うかどうかは、その音にフラストレーションを感じるかどうかです。ロックコンサートでは100デシベルもの音が会場に響いていますが、誰もうるさいとは感じていません。フラストレーションの原因の多くは心の問題であり、相手との人間関係の問題です。当然、苦情者の数も多くはなく、個人的な苦情ですから個別対応が可能です。

フラストレーションのもととなっている相手の被害者意識をどうすれば解消できるか、そのことに注力すべきです。うるさく感じさせないための対応が求められるのですが、現実には最も簡易な防音対策として、取りあえず原因となる音を止めてしまうという対応がなされ、その風潮が社会的に定着してきているように感じるのです。

騒音問題の解決には、「節度と寛容とコミュニケーション」が必要というのが筆者の持論です。「音を出す側の節度」と「聞かされる側の寛容」、そして、それをお互いが感じ取れるコミュニケーションが必要です。しかし現実には、音を出す側は相手を「不寛容だ」と非難し、聞かされる側は「迷惑騒音だ」と節度のなさをののしり、相手の悪意を感じ取るだけのコミュニケーションしか存在しないという真逆の状況が蔓延しています。

トラブルの渦中にある人は、もう一度、冷静に問題を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。

橋本 典久 騒音問題総合研究所代表/八戸工業大学名誉教授

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はしもと のりひさ / Norihisa Hashimoto

福井県生まれ。東京工業大学・建築学科卒業。東京大学より博士(工学)。建設会社技術研究所勤務の後、八戸工業大学大学院教授を経て、八戸工業大学名誉教授。現在は、騒音問題総合研究所代表。1級建築士、環境計量士の資格を有す。元民事調停委員。専門は音環境工学、特に騒音トラブル、建築音響、騒音振動、環境心理。著書に、『2階で子どもを走らせるな!』(光文社新書)、『苦情社会の騒音トラブル学』(新曜社)他。日本建築学会・学会賞、著作賞、日本音響学会技術開発賞等受賞。米国への現地調査後、我が国での近隣トラブル解決センター設立を目指して活動実践中。

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