「公園閉鎖問題」苦情住民だけが悪いと言えない訳 「騒音トラブル」に潜むいくつもの重要な問題点
保育園の建設に反対するのは、環境の変化に対する不安が唯一の理由ということであり、保育園が迷惑施設であるという認識からではないということです。ちなみに、意識調査時に、「保育園は迷惑施設だと思いますか」という直接的な質問も行っていますが、「思わない」が78.1%、「思う」はわずか1.5%という結果でした(残りは「どちらとも言えない」)。
迷惑施設として忌避するのではなく、不安が原因ということなら、不安を十分に解消すれば保育園建設も順調に進むと考えられます。そのための努力が必要なのですが、実はそう簡単ではありません。まず、子どもの遊び声の大きさについて紹介します。
「子どもの声」は工場の騒音と比べても大きい
筆者の研究室では、総合的な子どもの遊び声の騒音測定調査も実施しています。東京都世田谷区に協力をお願いして区内の5つの保育園を選定し、筆者の地元八戸市の保育園5つとあわせた10の保育園で、園庭で遊ぶ子どもの声の騒音を測定したのです。世界でも初の「子どもの遊び声」の騒音データでしょう。
データを示す前にひとつ、留意点があります。ここでは音の大きさを騒音レベルとして記述しますが、それは用語の問題であり、子どもの声を「騒音」として扱っていることとは意味が違うということを、誤解のないようにお願いいたします。
まず、保育園の園庭で子どもたちが遊んでいるとき(園児たちの中心から距離10m地点)の騒音レベルの大きさですが、園児50人が遊んでいた場合の平均的な騒音レベル(等価騒音レベル)は約70デジベル。20人程度の場合には、約65デジベルという結果が出ました。
これを基準に上端値との関係を調べたところ、騒音レベル変動の上端値(L5)は等価騒音レベルに約5デシベルを加えた値になることもわかりました。つまり、園児50人が園庭で遊んでいるとき、集団の中心から距離10mにおいて、等価騒音レベルで70デシベル、上端値(L5)で75デシベルの音が出る可能性があるということです。これは近隣住民が「うるさい」と感じても無理はない大きさといえます。
わかりやすくするため、公害騒音として騒音規制法の規制対象となっている工場騒音と比べてみましょう。
プレス工場や木材加工工場など、騒音規制法の対象となる大きな騒音を発生させる工場を特定工場と呼びますが、この特定工場からの騒音の規制値(上端値〈L5〉の値で決められている)は、一般住居地域の昼間で最大60デシベルです。敷地境界でこれ以上の騒音が出ていた場合は、罰則の対象となり、速やかに規制値以下となるよう防音対策を行わなければなりません。
保育園の場合は、園庭で50人の子どもが遊んでいる場合の騒音レベルの上端値は75デシベルですから、特定工場と比べて15デシベルも大きな値となっています。このように音の大きさだけを見れば、保育園というのは、かなり大きな音源施設であることは間違いありません。ただし、これはあくまで子どもたちの中心から10mの位置での数値であり、距離が離れればそれだけ音の大きさは小さくなります。
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