「公園閉鎖問題」苦情住民だけが悪いと言えない訳 「騒音トラブル」に潜むいくつもの重要な問題点
以前、自治体職員等を主な対象として講演会を企画している会社から、『葬儀場、保育園等の「いわゆる迷惑施設」の立地・建築紛争と予防施策』というテーマで講演を打診されたことがありました。葬儀場と保育園を「迷惑施設」としてひとくくりにしたあからさまな表現に驚きましたが、反面、このような意識がもうすでに自治体等では定着してきているのかもしれないとしばし嘆息の思いでした。
いや、それどころではないかもしれません。最近の葬儀場は無煙無臭、高い煙突もなく煙や臭いが出ないのが普通です。片や、保育園や今回の件のような遊園地からは、子どもの声などの騒音がでるため、葬儀場より迷惑と感じる人がいるかもしれません。葬儀場より迷惑となれば、これは正に「子育て受難の時代」です。
「迷惑」とは、迷惑だと思うと迷惑になり、そう思わなければ迷惑になりません。当たり前のようですが、これは大事な点です。日本では、ベビーカーをそのまま地下鉄に乗せるだけでも迷惑だと感じる人がいますが、ウイーンの地下鉄では自転車さえそのまま乗せることができます。でも、迷惑行為だと怒る人は誰もいません。迷惑とは、ひとえに主観的な存在なのです。
「保育園」建設に反対する人は多い
しかし、現実には全国各地で保育園建設に反対する状況が起きています。この理由はいったい何なのでしょうか。通常、迷惑と感じるのは、その裏にフラストレーションがあるためですが、保育園などの騒音問題の場合には不安感がフラストレーションにつながっているのです。以前、筆者の研究室で市民への意識調査を行ったことがありますが、そこには明確な結果が示されていました。
これまでは、保育園建設に反対する人は「静かな地域に住む高齢者」という一般的な論調がありましたが、意識調査結果を統計学的に検定すると、性別、年代、居住歴の長さ、家族構成、仕事の有無(在宅時間が長いか)、用途地域(静かな場所かどうか)のいずれに関しても明確な関連は見られませんでした。数値的には、まったく関係ないといってもよい結果です。
唯一、明確な相関関係が確認されたのは、「騒音に対する不安を感じるか」という質問の回答だけでした。
(外部配信先では、図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は「東洋経済オンライン」内でお読みください)
図は、「仮に、あなたの家の隣に保育園建設計画が起こったらどうしますか」との質問と、「あなたの自宅の横に保育園ができるとすると、騒音に対する不安を感じますか」の質問の回答をクロス集計したものです。この結果では明確な傾向が確認できます。
保育園建設計画に「強く反対する人」の9割が“騒音に対する不安”を大いに感じており、「少し感じる人」を合わせると100%です。そして、不安が少なくなると建設反対の意見もそれに応じて低下し、不安を感じない人は保育園建設を歓迎するとまで答えているのです。
保育園の建設に反対するかどうかは、静かな住宅地に住んでいるかどうかや、高齢者かどうかなどには一切関係がなく、その人が保育園からの子どもの声の騒音に不安を感じるかどうかで決まっているということです。これほど明確な傾向が現れるというのは、その因果関係の強さを表すものだと考えてよいでしょう。
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